第215話 クロスステッチの魔女、奇妙な依頼を見つける
「ルイス、その依頼には何て書いてあるの?」
元々読み書きが得意ではない私にとって、古びた紙にはっきりしない色のインクで書かれた文字を読むのはかなり難しかった。けれど今飛んでいて、私より字を読むのが上手なルイスなら読めるだろう。そう思って聞いてみると、ルイスはふんふんと何事かを呟いてから私の元に戻ってきた。
「あの依頼は、捜索のようです。《導き星の欠片》という石をひとつ、探してほしいって」
聞いたことのない代物だった。四等級が探せないものなら、上の等級の魔女へ依頼するようにしたらいいのに、とも思う。戻ってきたルイスを抱き抱え直すと、「報酬はかなり多そうでしたよ、金貨でしたし」と追加で教えてくれる。
「なんかその名前、聞いたことある気がするー。でも忘れたー!」
「あら、アワユキは聞いたことあったの? 私は初めてよ。それじゃあ、受付の人に聞いてみようか」
「マスターが見つけられたら、お手柄かもですね!」
そんな話をしながら、受付の人にあの依頼のことを聞きにいく。その魔女はしばらく不思議そうな顔をした後「……ああ、《導き星の欠片》ですか」と思い至った顔をする。
「あれは、四等級魔女にだけ出してる依頼なんですけど、中々持ってきてくれる人もいないんです。100年の間に手に入ったらいいなー、という依頼の出し方なのですがね」
「どうして上の等級の魔女に頼まないんです?」
「《導き星の欠片》は希少性の高い石なのですが、強い魔力の持ち主には見つけられないという特性があるんです。未熟な魔女のみが手にすることのできる石、ということで、上の等級の魔女では全く見つけることができなくてですね……」
なるほど、本来なら上の等級の魔女に頼んで解決するだろうことが、上の等級だからこそ見つけられない、ということのようだ。この世にはそんなものもあるのだ、と思うのは不思議なことだった。修行して、魔力を高めて、上の等級になればもっと、色々なものが手に入ると思っていたのに。
「何かのついでに、それらしいものを見つけたら持ってきてください。名前が伝わってるだけで、どうやって手に入れたかは若い魔女達もあまりわかっていなかったので」
「わかりました」
そう頷いて、《導き星の欠片》以外の採取のために遠出を考えながら組合を出る。アワユキが名前を知っていたということは、精霊にまつわる品物ということなのだろうか。
「とりあえず、明日からしばらく採取でお出かけよ。二人にも手伝ってもらうからね」
「「はーい!!」」
元気のいいお返事を聞かながら、この日は家に帰った。
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