第149話 クロスステッチの魔女、素材事情を聞く
「うちのお姉様は《ドール》達を連れて、素材を狩りに行くって言ってました。だから《ドール》達全員が武器を修めていて、私もうちのルイスに教えてもらっているんです」
「みーちゃんなんかは、宝石を糸に紡ぐもの。お金で冒険者ギルドに頼むことが多いとはいえ、この間も自分で宝石掘りに行ってたよねー」
「やっぱり、自分で見たものを買うのが一番わかりやすいんだもの」
私はどうしてるのかと聞かれて、自分で採取に行くか庭で育てるか買っています、と答えた。「それができるのが一番楽だわよねえ」と呟いたのはガブリエラ様だ。
「うちはグース達を飼育して抜けた羽を集めているけれど、やっぱり途中で足りなくなることもあるのよね」
「ああ、魔女組合に依頼が来てましたものね……鳥の羽を集めてって」
ガブリエラ様と知り合ったきっかけの依頼を思い返す。若い魔女によく依頼を出しては鳥の羽を集め、とにかく量を集めて質を何種類かに設定し、混ぜ物の割合で売り出しているらしい。売れている魔女というのも世知辛いものだ。
「宝石を集めるとなると、やっぱり山とかに掘りに行くんですか?」
「珍しいものとかはね。《魔女の箱庭》に近いもので、鉱物を増やしたいときの魔法があるから、普段使いするものはそこで育ててるわ」
《魔女の玉泉》だと言って、ミルドレッド様は綺麗な小箱を見せてくれた。私の《魔女の箱庭》は木製の四角い箱だけれど、こちらは何かの石でできた様子の六角形の箱だ。細かい模様が彫り込まれていて、上の部分は透明な水晶か何かを枠にはめ込んでいるような形をしている。蓋かと思ったけれど、取れそうには見えなかった。
「きれーい……」
「使い方は《箱庭》と一緒よ。でもこれでは珍しい石の一部に必要な魔力は用意できないから、やっぱり掘りに行くのが質も確実なのよ」
「いくらこれで増やせるとしても、目当てとするだけの品質を狙えるかは別だものねえ」
私はまだあまりそこまでこだわったことがないのだけれど、上位の魔女様達としてはそこは気になる点らしい。だからこそ採取に価値はある、ということだろう。
「みーちゃんは行く? 素材狩り大会」
「どうしようかしら……竜の心臓は死ぬと上等な魔法を宿した宝石になるというのを前に本で読んだのよね」
「行けばいいんじゃないかな!」
「うちのお姉様は行きそうですねえ。どう刺繍の素材にするのかわかりませんが」
竜の素材は人間も魔女も欲しがるからこそ、乱獲しないように決まりはあるらしい。竜狩りの話をしている他の魔女の呟きを耳に入れてみると、本当に大会扱いされそうな様子が少しおかしかった。
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