第48話 クロスステッチの魔女、お茶会をする
「四等級の魔女かー、若いっていいことだわ」
「ねえさま、そこまで老け込んだ気分になるほどの年じゃないでしょー?」
いくつ?とガブリエラ様に聞かれて、素直に大体40くらいになると話した。やっぱり若い!というあたり、ガブリエラ様はそれなりのお年なのかもしれない。まあ、魔女に年齢なんてそこまで関係ないのだけれど。
「ルイスはつい数日前に、私の《ドール》になったばかりの子なんです。やっと自分の《ドール》を持っていいとお許しが出たから、すぐお店に行ってしまいました」
「それで選んでいただけたとは。よかったですねぇ、ルイス君」
耳に穏やかな声でイサークにそう言われ、ルイスは嬉しそうに頷いていた。ぱっと見は同じような小型の《ドール》でも、少年型のルイスより老人型のイサークの方が大きくて、ルイスは少し見上げてるような姿勢になる。
「僕のマスターはいい人だけど、グース糸が当たってしまったから無茶苦茶忙しいですずっと……」
「そうですねえ。ガブリエラ様とグウィンさんは、魔女と《ドール》じゃなかったら倒れてしまっただろうな、と思った時が結構あります」
「大変なんですね……そう思うと、僕もグウィンさんのように大きい体だった方が良かったんでしょうか」
《ドール》達は《ドール》達で、紅茶と砂糖菓子でお茶会と会話を楽しんでいるようでよかった。私は《裁きの魔女》に捕まったことやサリルネイアでのことはそこまで話さないようにしながら、聞かれた質問には答えていく。
「クロスステッチの魔女ちゃんは、糸紡ぎはできるの?」
「ええ、少しだけ。ルイスの魔法糸をこの間紡いだんですけど、それは色々あって切れちゃいました。今は他の人に頼んで紡いでもらったものを入れてますけど、そのうちまた再挑戦したいと思ってます」
「やっぱり、自分で紡いだ糸の方が《ドール》達も喜ぶのよねぇ。わたしのイサークも、わたしの糸の方が調子がいいって言ってたし」
「グウィンもそうだねー」
自分のマスターが作った糸で体内の魔力を満たすのは《ドール》にとって心地のいいもの、ということらしい。ルイスにも今度、改めて魔法糸を紡いであげるべきだろうと思った。
「……おいしいお紅茶をありがとうございます、ガブリエラ様。私はまだ、《自律》の魔法が使えないんで、自分の手で淹れるしかできないんです……お師匠様の図案を見せてもらっても、まだうまく再現ができなくて」
「そこはまあ、慣れじゃないかなー?」
「私たちはそれ用の魔法の籠められた糸を紡いで織って、で魔法にしてるけど、刺繍になるとまた勝手が違うんだねえ」
「この間は刺繍を一目間違えたら、箒が墜落しました……」
若いって証だねぇ、とガブリエラ様に心なしか遠い目で言われた。
「単に未熟ってだけなんじゃないかなあ……」
「その通りです……練習あるのみって思ってましたが、ルイスにも怪我をさせないように気を付けないと」
イザベラ様の言葉に頷く。色々と練習しないといけないものが多いな、と、苦手な魔法をリストアップしただけでうっとなってしまった。
「ところでルイス君、君のその目はどうしたんですか?」
「僕、前に別のマスターに買われて売られたのを、今のマスターに買い取られたんです。その時に右目がなかったから、新しいのをマスターがくれました」
「歯車の目、カッコいいですね」
「はい! 僕はマスターが大好きなんです」
横で展開されている《ドール》三体の会話は、少し気恥ずかしかった。
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