管理人の執務室にて

「ただいま戻りました」代理人はそう言って部屋に入ると、帽子を帽子掛けにかけ机に座って執務中の管理人の方に歩み寄った。

「お帰り、彼女の様子はどう?」管理人は代理人に椅子を、そして二人分のお茶を出して尋ねた。「元気でしたよ、帰れなくなる人がいる訳も理解しました。小鳥に一緒に暮らすことをお許しなさったんですね、あの貝の為ですか?」と管理人に尋ねた。

「そう、海に行こうと思いついて、自分で行く準備して、案内を呼んだだけで、海までの道や、休むためのベンチができたし、貝まで出現したから。この世界が海に行くことを許可したとしか思えない。それに、その貝をペンダントにして身につけようとするのがどうも引っかかって。元の世界に帰ったらこの世界の記憶は失われるはずだけど、それが通用しなくなるかも。その影響を思うとね。大体あんな長い距離は動けないはずなのに。慌てて小鳥を監視につけたけど!ありえない!!」管理人は少し口調を荒げ渋い顔をして言った。

「海までは私たちでは監視できませんからね。それとあなたの心配は彼女がこの世界の事を、ほかの人に話したり、広めたりするということですか?彼女のもとの世界ではインターネットを使えば世界中に情報を拡散できますものね」代理人は穏やかにそう答えた。

「そうなのよね・・・。悪用する人が出ないとは限らないし」管理人は立ち上がり窓の外を見た。

「それなら、管理人の方から、帰るころになったら話をしたらどうです?ここでのことを広めないようにって。彼女はあなたを頼りにしているようだし、あなたの言うことなら聞くでしょう」代理人はそう答えた。

「そうするしかないか。海まで行けたのも、貝が出現したのも何らかの意味があるはずだし。帰るころになったら、もう一度彼女に会わなくてわね。」管理人は窓の外を見たまま難しそうな顔でそう言った。

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