代理人さんの訪問
ノックの音にドアの方を見ると、「管理人の代理できました、入ってよろしいでしょうか?」と男の人の声がした。「どうぞ」と言うと「お邪魔します」と言ってスーツをきた初老の人、紳士と言うにふさわしい風貌の男性が入ってきた。
私はテーブルの椅子を勧め、「お客様にお茶とお菓子をお願い!」と言って出てきたお茶とお菓子を「どうぞ」と紳士の前に置いた。
紳士はお茶を一口飲むと、「管理人に会いたいとのことでしたが、その本は私の管轄なので、私が来ました」と言った。
私は「昨日の夜、その本が机の上にあって、最後に『帰れなくなる人がいます』と書いてあったので、どうゆう意味か知りたいんです」と尋ねた。
「解りました。まずその本について説明しますね」紳士は話し始めた。「その本はこの世界に来た人すべてに読んでもらっている本です。初めの方はこの世界の説明です。そして最後の『元の世界に帰れなくなる』と言うのはすべての人に当てはまるわけではありません」と紳士は話すと一口お茶を飲んだ。
「どんな人が帰れなくなるのですか?」と私は尋ねた。
「理由は二つあります。一つは何でも出てくることに慣れて、自分で何もしようとしなかったり、命令口調になる人。もう一つは出てきたり、してもらったことが気にくわなくて文句を言ったり罵倒する人がいるということです。自分で何もしない、出来ないのであれば元の世界に戻っても暮らせませんし、出てきたものや、してもらっていることに感謝出来ないのは健全な心とは言えないでしょう、ですから心と体が癒えたとはいえず元の世界に帰れなくなるわけです」と代理人は答えた。
私はその話を聞いて、納得できる理由だと思ったが、私はどうなんだろうか?新たな疑問が湧いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます