第684話 十二月十三日一回目のリハーサルを終えて(三)

 美香と葉月はづきが松野と青葉あおばと一緒に楽屋がくやの方に帰ってくる。園香そのかが聞くともなしに聞いていると、げんとおるたち青山青葉あおやまあおばバレエ団のダンサーたちが素晴らしいという話から、この公演が終わったら、宮崎バレエにも教えに来て欲しいという話をしていたようだ。それに対して青葉たちは笑顔で頷いていた。


 男性の楽屋の前ではいつきたち花村バレエの男子たちが木島や和也に『トレパック』の振りを見てもらっている。木島と和也の技術は素晴らしい。

 樹たちの踊りを見ながら、そのそばを通りかけたすみれと美織みおり古都ことが微笑みながら、木島たちに何か話し掛けると木島と和也が笑顔で頷く。

 木島が樹たちに、

「すみれさんたちがロシアの踊りを見せてくれるって」

 と言う。その言葉に樹たちが顔を見合わせた。

 近くにいた園香と真美、奈々たちも顔を見合わせた。このやり取りに気付いたゆい瑠々るるもすみれたちの踊りを見ようと楽屋から出てきた。


 楽屋前の通路で、すみれと美織、古都の三人で『トレパック』ロシアの踊りを見せてくれた。

 今まで木島や和也たち男性が教えてくれていた時は、その派手なテクニック、大きな跳躍にばかり目がいっていた。園香たちも、そこにばかり意識がいっていた。

 しかし、すみれ、美織、古都の見せたロシアの踊りは、それほど派手さを強調した踊りではないが、何かが決定的に違うように思えた。

 女性だから男性だからという違いではない。

 園香は、何が違うのだろうと見た。すみれたちの踊りは、ジャンプをしたり、上体を固定して足を動かす中で、頭の位置が上下することはある。頭の位置が上下することはあるのだが、常に一定の位置をキープし続けている。

 つまり、ジャンプしないときは常に上半身の位置が変わらず足だけ華やかなステップを踏む。ジャンプがあるところは、もちろんジャンプしたら頭の位置が高くなるが、ジャンプした時の頭の高さはここ、ジャンプしていない時の頭の高さはここと、それぞれの時の頭の高さが一定している。いちいちジャンプの高さがまばらだったり、三人の高さがそろわないことはない。常に一定の高さを保っている。

 だから、一見すると、上半身が動かず足だけで華やかに踊っている様な印象を与える。

 今まで木島たちの踊りも凄いと思ったが、すみれたちの踊りは、ここに目がいく。彼女たちの踊りは、また、別の視点から凄いと思った。

 しかも、この三人は少なくとも、園香の記憶では、今までこの振りを三人一緒に練習していた様子はない。今、ここで初めて一緒に踊ってピッタリそろっている。それにも驚かされる。

 近くにいた美香や葉月はづき朱里あかりたちも驚いた表情で見ている。ルエルとエルネスも微笑みながら拍手を送る。唯も一緒に嬉しそうに拍手をする。

 唯は拍手をしたかと思うと、早速、真似して踊ってみる。その様子が可愛らしく皆に笑顔が広がる。

 その後、樹たちトレパックの三人も一緒に何度か踊ってみた。


「いいよ。頑張って、まだまだ、良くなるから」

 すみれが三人に微笑んで楽屋に入っていった。


 美織が唯の頭を優しく撫でると、唯が嬉しそうに周りを見回す。その様子に、また、そこにいた皆に笑顔が広がった。

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