第683話 十二月十三日一回目のリハーサルを終えて(二)

 リハーサルが終わり、次のリハーサルの準備にかかる。皆それぞれに一度、楽屋がくやに帰って準備をする。

 ゆいは真由やあい瑠々るると楽しそうに楽屋に向かう。小走りに階段を下りていく唯に北村が、

「走らないで」

 と注意すると、唯が元気に手をあげて、

「はーい」

 と言いながら走っていく。

 その後ろを玲子や佐和たちが朱里あかりたちと一緒に歩く。朱里が笑いながら、

「唯ちゃん元気やな」

 と言う。玲子や佐和も微笑みながら頷く。

 園香そのか恵人けいとが玲子や佐和の後ろをついて行くように歩いていると、朱里あかりと奈美、詩音しおんが玲子、佐和と『あし笛の踊り』の振りのことを話していた。

 園香がどんな話をしているのだろうと思って聞いていると、かなり細かい技術について話していることがわかった。

 恵人も驚いた様な表情で、その朱里たちの会話を聞いている。園香と恵人が驚きながらも感心させられたのは、朱里たちは玲子たちに対して『あし笛の踊り』のアドバイスをしているのだが、振り付けや演出そのものに影響するような指摘ではなく、あくまでもこの踊りの中におけるクラシックバレエの技術や表現に対するアドバイスをしている。

 どうしたら、振り付けの中で、そのポーズに入りやすいか、細かいパ、パとはバレエにおけるステップや踊り、踊りの中での足さばきなどをいうのであるが、そういう部分のアドバイスをしていることと、その内容が的確で分かりやすいことに驚かされる。


◇◇◇◇◇◇


 園香が衣装係の楽屋を見ると由香たちが忙しそうに次のリハーサルの準備をしている。

 唯たちの楽屋を覗くと、唯たちが楽しそうに話をしている。

 真理子がそれぞれの楽屋に、すぐ次のリハーサルが始まるから準備をするようにと伝えて回る。


 すみれと美織みおり静音しずねと話しながら楽屋に帰ってきた。

「二人とも相変わらず素晴らしい踊りをしているわ」

 静音の言葉に微笑むすみれと美織。

「あなたは、今度は何を踊るの?」

 すみれの問い掛けに、静音が微笑みながら返す。

「私は年明けに『白鳥の湖』を踊るの」

「そう、観に行くわ。この前の青山青葉あおやまあおばバレエ団の公演観に来てくれたものね」

「私も行きます」

 すみれと美織が微笑みながら言うと静音も嬉しそうに微笑む。

「ありがとう。でも、ここの公演は本当に凄いわね。いつも、こんな感じなの?」

「私たちも、ここの舞台に立たせてもらうのは初めてだけど、これほどのものは、今回が初めてみたい」

「そうなのね。それにしても凄いわ」

「本当ね」

「あなたたちがいるから凄いというのも、もちろんあるけど、でも、見ていて思うの。それだけじゃないわ。ここの生徒さんたちも凄くレベルが高いわね」

「そうなのよ。基礎がしっかりしてる」

「本当ね」

 三人が楽屋に入っていく。

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