第376話 ホールリハーサル一日目 楽屋(一)
このホールは舞台の
「おはようございます」「おはようございます」
楽屋へ行くまでの通路であちこちから「おはようございます」という声が飛んでくる。園香たちは挨拶を返しながら真理子とあやめの楽屋に行った。
開いているドアをノックして部屋の中に挨拶する。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
園香、真美、すみれ、
「おはようございます。今日はよろしくお願いします。皆さん早いわね」
すみれと美織の横から、
「おはようございます」「おはようございます」
「あら、唯ちゃん、知里ちゃんも、おはよう。今日は頑張りましょうね」
真理子とあやめが、元気に挨拶する唯と知里に笑顔で挨拶を返す。唯たちは嬉しそうに顔を見合わせる。
「今日はよろしくお願いします」
一緒について来た唯のお母さんと知里の両親も挨拶する。真理子とあやめが二人の両親に丁寧に挨拶する。
「今日はよろしくお願いします」
その後、少し知里の両親と話をしていた。知里のお父さんが真理子たちに今回の急な転勤の事などを話していたようだ。
真理子やあやめにも、これから家族で海外に行く知里の親子は、さぞ忙しいことだろうという思いがあった。こんな大変な時に最後まで花村バレエのリハーサルに参加してくれたことに感謝と労いの言葉を掛けた。
真理子たちと話をした後、それぞれの楽屋に向かう。
園香の楽屋は、すみれ、美織、
そして、その隣、舞台に上がっていく階段のすぐ近くの楽屋は、衣装係の由香や
今日のリハーサルも公演本番の日も、青山青葉バレエ団の衣装部門であるアトリエ青山青葉のスタッフが数人手伝いに来てくれることになっており、アトリエ青山青葉のスタッフ専用の楽屋として利用してもらうことになっていた。
唯や知里の楽屋は、真理子とあやめ、すみれたちの部屋の向かいの大きな楽屋でここは主にキッズクラスが利用する。そして、その隣にあるもう一つの大きな楽屋が小学生高学年から大人クラスの女性の部屋として割り当てられていた。
今回はオーケストラの団員も百人近く参加する。
このホールのある建物には花村バレエが利用する大ホールの他にも併設するホールがある。他にも多目的スペース、会議室などいろいろなスペースが建物の中にある。
リハーサルの日も十二月の公演当日も併設するホールを利用する団体はあるが、控え室をすべて利用する団体はない。
そんな事もあって、そちらのスペース、更には多目的スペースと言う部屋も利用させてもらえることになっていた。
とにかく今回の花村バレエの公演は出演者やスタッフが多い。県下でも大々的に公演や発表会をして注目される花村バレエだが、今回の記念公演の関係者は通常の花村バレエの公演、発表会の三倍以上の人数になる。
園香たちが自分の楽屋に入ると既に花村バレエのバレエ教師である秋山が準備をしていた。園香たちが荷物を置いてリハーサルの準備をしていると北村と小林がやって来た。
花村バレエのバレエ教師たちも園香たちと同じ楽屋を使う。
「おはようございます」
北村たちがすみれや美織に挨拶する。すみれたちも丁寧に挨拶する。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします。今日は
「青葉先生には真理子先生の部屋を使って頂くようお願いしています。その方が何かと都合がよいと思いまして」
「そうですか、それがいいと思います。ここは
「いいです、いいです。そう思っていました」
北村が答える言葉に、美織が隣から聞く、
「
「寿恵ちゃんは花村バレエの生徒たちと同じ楽屋がいいと言うんで、そちらを使ってもらうことにしてるんです……いいですか?」
「え? 寿恵がそう言うなら、いいんじゃないですか。ここはいやなのかな」
美織の言葉にすみれが微笑む。
「寿恵ちゃんからすると大先輩ばかりの楽屋で気を遣うんじゃない?」
「私もキッズクラスの楽屋使わせてもらおうかな」
美織の言葉に隣からすみれが微笑みながら、
「また、衣装の由香が『美織はどこにいるの!』って騒ぎだすわよ」
と言うと楽屋に笑いが広がる。北村が思い出したように、すみれに言う、
「あ、そうそう、昨日、遅い時間に宮崎先生から稽古場に連絡がありました。
一瞬、真美の表情に緊張が走った。
すみれがそんな真美を横目に、
「そうですか、ロビーの係の人に宮崎先生が来られたら、私に伝えてもらえるよう連絡しておきますね。宮崎先生、今回のリハーサルは見ておきたいと言ってたんで」
そう言ってロビーの方に上がって行った。
真美が緊張した表情で呟く。
「ついに美香先生登場か……」
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