第372話 ホールリハーサル前日のリハーサルを終えて(一)
今回初めて
「元気いっぱい笑顔で踊っていて、本当に素晴らしかったです」
と褒めてくれた。
そして、キッズクラスの生徒たちが解散した後、真理子、あやめ、すみれと
園香も松野の言葉は間違っていない気がした。キッズクラスの子たちの元気な笑顔は稽古場を明るい雰囲気にしてくれる。そして、そのキッズクラスの全員を牽引してくれているのは間違いなく、唯の純粋で元気な姿だと思えた。
園香と真美がすみれたちと話をしていると、松野がすみれと
そして、園香に優しく話しかけてくれた。
「あなたが園香さん。すみれたちから聞いてたわ。頑張っているのね。よく踊れている。表現も素敵よ。あなたは主役を踊るのにふさわしい技術と表現力は持っている」
「あ、ありがとうございます」
松野が思い出すように言葉を続ける。
「あなた、青山青葉バレエ団の三階に見学に来たことがあったわね」
「はい」
園香は急に青山青葉バレエ団の稽古場の話になって何の事だろうと思った。
「あの場所に初めて来たときの感覚を覚えてる?」
「え? ええと、さ、三階、三階……階段を……三階に上がった瞬間から、何か、神聖で空気が違う気がしました。その空気に驚いたのを覚えています」
「そうね、あなただけじゃない。あの場所に来る人は皆感じるのよ。プリンシパルだけが感じる神聖な空気」
「はい」
「空気を味方に付けなさい」
「は、はい」
「あなたは主役を踊るのにふさわしい技術と表現力を持っている」
そう言って松野は微笑んだ。
園香は言葉を失い、ただただ深く頭を下げた。
青山青葉バレエ団で、プリンシパルの稽古場、あの三階の稽古場で指導している松野からの言葉に園香は心が震えるような思いがした。あの名門バレエ団でプリンシパルたちを指導しているバレエ教師だ。
松野は軽く園香の肩を叩き、もう一度、優しく微笑んだ。
そして、すみれと美織の二人と話し始めた。
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