第371話 ホールリハーサル前日 リハーサル(九)
その後『くるみ割り人形』のリハーサルを全員で一度通した。
第一幕のクリスマスパーティーの場面も大人クラスの出演者たちと楽しそうに演技をする。そして、唯たちキッズクラスの次の見せ場は『ねずみと兵隊人形の戦い』だ。ここで、唯たちは子ねずみの役で登場する。この子ねずみたちは何度見ても可愛らしい。子ねずみの登場という演出は一般的な『くるみ割り人形』にはないが、この場面がかなり今回の作品を引き立たせる演出になっている。
更にキッズクラスの子どもたちは第二幕で『キャンディボンボン』を踊る。この踊りも
ハレルキンを踊る
樹と光の男子二人はこの振りを始めた頃と比べて、随分、体が柔らかくなってきた。玲子もその頃から比べると一つ一つの振りがクリアになってきた。キープ力が格段に上がってきたのを感じる。周りの目から見ても、三人とも踊りに余裕が出てきた。
第一幕最後の『雪の場』も皆踊りが板に付いてきた。細かい部分は今日もいくつかアドバイスがあったものの、それは確認程度のものだった。
今回のホールリハーサルは本番通りオーケストラが入る。花村バレエの出演者全員に曲に対する不安があった。しかし、今日のリハーサルで踊ってみて、オーケストラの団員全員による演奏ではなかったが、思いのほか踊りやすいという実感があった。そして何より一つ一つの曲が美しい。明日のリハーサルでは初めて演奏者全員がそろった演奏が聞ける。出演者もスタッフも一体どんな演奏になるのだろうと期待が膨らんだ。
◇◇◇◇◇◇
全体のリハーサルが終わった後、園香は由奈、恵人と『冬の松林の場』をもう一度さらった。
今回のリハーサルでは、
クララ役の由奈も、今までになく青山青葉バレエ団の康子が付きっ切りでいろいろなアドバイスをしてくれていた。
康子もまた、佐由美と同じく美織の同期で、二人ともバレエ団のプリンシパルだ。
園香はあまり知らなかったが、この佐由美と康子は青山青葉バレエ団では美織やすみれと並んで『くるみ割り人形』の主役を何度も踊っている二人だという事だ。それだけに細かいアドバイスが、普段、すみれや美織から言われる事とほとんど同じだった。
それにしても、どうして、すみれも美織もいるのに、今回、これほど佐由美と康子が親身に指導してくれるのだろうという思いもあった。
第二幕のディベルティスマンの出演者たちも、それぞれ、もう一度自分たちの踊りを確認していた。
特に『スペインの踊り』を踊る奈々、真美、
真剣な表情で木島から踊りを学ぶ奈々たち。真美や一美はエキシビションのリハーサルでもレベルの高い踊りを見せたが、木島の指導は、また、別次元のレベルの高い指導だった。
文化イベントで『ドン・キホーテ』のキトリのヴァリエーションを見事に踊った真美は元いた大阪の宮崎バレエスタジオでは名教師である宮崎美香の
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第一幕から第二幕まで小さな修正箇所や踊り直しはあったものの、特に大きな問題点はなかった。
花村バレエのスタッフも
稽古が終わって、しばらく、皆それぞれに雑談する。花村バレエの出演者やスタッフ、舞台の手伝いをするお母さんたちも、青山青葉バレエ団のダンサーやスタッフ、オーケストラの団員たちと話ができるのは貴重な経験になった。
手伝いに来てくれている美和子や
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