第31章 再び大阪へ 宮崎美香バレエスタジオ

第348話 宮崎美香バレエスタジオに行くメンバー

 すみれが園香そのかを呼ぶ。

 真理子、あやめ、北村、秋山という花村バレエのスタッフと、すみれ、美織みおり瑞希みずき、優一、そして、真美と美和子と香保子かほこも集まる。


 すみれが切り出す。

「この週末、大阪に行こうと思うの。それで行くのは、私と真理子先生。そして、園香ちゃんの三人で行こうと思っているの」

「私は行かなくていいですか?」

 真美が気にするようにすみれに言う。

「大丈夫よ。真美ちゃんも一緒にというのも考えたけど、今回は花村バレエの本気を宮崎先生に伝えることが大切かと考えたの。ここで真美ちゃんの力を借りるのは、もしかしたら逆効果になるかもしれないとも思ってね。真美ちゃんを使って説得しに来たみたいな感じになるんじゃないかと思って」

 すみれの言葉に、その選択が果たして効果的なのだろうか……と思い、どこか引っ掛かるものを感じる真美だった。

「そうですか……確かに私が行くと、ちょっと話が横道にれる感じになるかもしれません……でも、私個人的には、後々、美香先生の矛先ほこさきが私に対して『なんで来てなかったねん』ってなりそうです」

 すみれが微笑みながら、

「大丈夫よ。これは真美ちゃんから依頼ではなくて、花村バレエからの依頼だから」

「そうですか」

「真美ちゃんは、こっちに残って公演のリハーサルを見てあげて。美織たちもよろしくね」

 美織、瑞希、そして、北村、秋山が顔を見合わせて、

「はい」

 と返事をする。


 園香がすみれに少し不安そうな表情で聞く、

「宮崎先生には連絡してあるんですか?」

「ええ、あっちはちょうど十月の終わりに公演をやったばかりで春まで少し落ち着いてるみたいだから」

 すみれはいろいろと下調べができているようだ。園香が付け足すように、すみれに聞く。

「というか、ゲストの依頼のことは?」

「ああ、それとなく言ってあるけど、詳しいことは言ってない。電話で言って、宮崎先生から『ダメ』って言われたら、行けなくなるじゃない。だから、大阪に行く用事があるから寄らせて頂きたいって伝えてあるの」

「だ、大丈夫ですか? それで行って、いきなりゲスト、瑠々るるちゃんって」

「まあ、なんとかするよ」

 すみれが微笑みながら言うが、本当に大丈夫なのだろうか……園香には不安しかなかった。


 園香が話を変える。

「ところで、この週末行くんですか?」

「そうよ。もうチケットも取ってあるから、あなたの分も」

「ええ」

 園香は驚いた。

「でも、なんで私が、私が行ってお手伝いになるでしょうか?」

「一緒にいてくれるだけでいいのよ。真理子先生が花村バレエ代表、私は、まあ、今回の訪問ではゲストの青山青葉バレエの代表として、そして、園香ちゃん、あなたは、今回の公演の主役よ」

「は、はい」

 何の手伝いができるか、自分が行くことで二人の力になれるのか、園香には全く分からなかった。あやめが行った方がいいのでは、あるいは、美織が行った方がいいのでは……といろいろな思いが頭を巡るが、すみれの思いは揺るがないようだ。


 金曜日の最終便の飛行機で大阪に行くことになった。土曜日、日曜日と大阪に滞在して日曜日の最終便で帰ってくる。

 真理子とすみれという二人について行くだけでも緊張するが、向こうで会うのは宮崎美香だ。

 それを考えると落ち着かない園香だった。


 金曜日はあっという間にやって来た。

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