第333話 十一月になって
十一月。景色も、町行く人々の装いもすっかり秋の
春からずっと続いている公演に向けての練習に加え、先月は市内、県西部の文化イベントに参加して普段とは違う一ヵ月を過ごすことができた。
このイベント参加は教室の生徒たちにとっても気分転換になったし、当日の舞台は出演者にとって素晴らしい経験になった。
そればかりか、手伝い、応援に参加した生徒たちにとっても花村バレエを外からの目線で見れたことは貴重な体験となった。
出演者も出演していなかった生徒も、改めて自分たちがたくさんの周りのお客さんから支えられていることを実感できた。
そして、これから、いよいよ公演本番に向けての厳しい練習が始まろうという今、気持ちを切り替えられる貴重なイベントとなった。
◇◇◇◇◇◇
そんな週末、その日も、いつものように
美和子と
今日も最初のレッスンはキッズクラスの子どもたちだ。しばらくしていると、
「おはようございます」
右足をちょこんと前に出し左足は少し
ストレッチをしていた園香たちが一斉に唯に、
「おはよう」と返す。
「おはよう唯ちゃん。いつも元気だね」
すみれが声を掛ける。唯が笑顔で頷く。
その後、真由や
今日は秋山がキッズクラスのレッスンを受け持つ。レッスンには、すみれと美織、園香も手伝いに入る。
ストレッチをして、普段のバーを使ったプリエやタンジュなどのバーレッスンから、教室のフロアで歩いたり、スキップをしたり、ギャロップ、ジャンプの練習など、いつものクラスレッスンをする。
そして、その日も『キャンディボンボン』の練習をする。続けて『花のワルツ』『終曲のワルツ』も通す。
すみれと美織が子どもたちに「よくできている」と微笑みながら言うと、子どもたちも嬉しそうに微笑む。すみれが、
「この後、小学生高学年のお姉さんが来たら『ネズミと兵隊人形の戦い』の場面も練習するから待っていてね」
と伝えると、生徒たちが、
「はーい」「はーい」
と手をあげて元気に返事をする。
小学生高学年の生徒や中学生たちが集まり始めていた。
理央は文化イベントの舞台から見違える様に上達した。イベントの終わりに、すみれや美織、瑞希から「すごく上手になった」「キューピッド、本当によかったよ」と言われたことが彼女の中で大きな自信になった。
もちろん、その言葉だけでなく、観客の拍手や声援から自分の踊りが素晴らしいと認められているのを本人が実感できた。
このイベントで理央にキューピッドのヴァリエーションを踊らせたのは彼女の大きな成長に繋がったと教室の先生たちも実感していた。
そんな中で、一人の男性が階段を上がってきた。入り口に立つ男性に、生徒たちが「誰だろう」という目線を向ける。
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