第330話 秋の文化イベント(十四)ストリートダンス

 花村バレエと山野バレエの出し物が終わり、この文化イベントにおけるバレエの出し物は終わった。

 舞台下では、それぞれのバレエ教室の生徒で、今回出演してなかった応援の生徒たちや関係者たちが激励の言葉を掛けてくれた。出演者たちも嬉しそうに応援に来てくれた皆と話をした。

 真理子とあやめが園香そのかや皆に、周りで観ていたたくさんの人たちが「今度の花村バレエの公演、絶対に観に行く」と言っていたと教えてくれた。

 園香も真美も、今回、ここで踊った甲斐があったと思えた。


「すごくよかったよ。園香ちゃん。さっき他の出演者の人たちも『今度の花村バレエの公演、絶対観に行きます』って言ってくれたよ」

 千春が興奮気味に話す。

「本当ですか。それはよかったですね」

 園香が微笑む。

「園香ちゃん、すごかったよ。そうそう、大学生らしい人達が何人か集まっていて、その人たちも『絶対、公演を観に行く』って言ってましたよ」

 大人クラスに来ている本田さんと明坂あけさかさんという男性のレッスン生が教えてくれた。

 県内の他のバレエ教室の先生や生徒たちも口々に「公演を楽しみにしている」「絶対観に行く」と言ってくれた。


 園香と真美、美和子と香保子かほこは先程まで舞台のそでで観てくれていた次の出演者たちが気になって舞台に目を向けた。

 すみれや美織みおりたちも舞台を見上げる様に観ている。


◇◇◇◇◇◇


 司会者の二人が出演者の紹介をすると、ステージにストリートダンスというイメージとは少し違ったお洒落しゃれなジャズ調の曲が流れ始めた。


 舞台ではスーツ姿の女性と男性がヒップホップではなくタップダンスの様なステップをアレンジしたスタイリッシュなダンスが繰り広げられる。

 いつの間にか曲が変わり不思議なリズムとアフリカ辺りの音楽だろうか聞きなれない言葉と民族音楽を織り交ぜたラップのような曲に繋がり、男性と女性がアクロバティックなルーティンに入る。

 被せる様に軽快なリズムの曲が流れ始め、先程まで言葉を交わしていた多岐川という男性が体操競技の『床運動』や『あん馬』などで見たことのある『トーマス旋回』という技を見せる。そこから『ウィンドミル』というブレイキンの技に入り、足の高さを徐々に上げ『Aトラックス』へ、そして『エアトラックス』を見せ客席を一気に盛り上げる。

 曲が変わりヒップホップのステップを織り交ぜたダンスに入る。

 次の曲の変わり目で女性が数人出てきてパンキング、ワッキングという種類のダンス。体を柔らかく使いながら、腕をむちのようにしならせて踊る。続けて、腕のひじから先を回転させながら、頭の上、体の周りに巻き付ける様に踊る。

 その後に出てきた女性と男性が数人でポップロックを見せる。様々な動きを曲のリズムでポーズを止め弾くようにポップさせる。振りにウエーブを入れたり、ロボットダンスの様な要素も取り入れながら踊る。

 最後は全員出てきて、ロックダンスでそろえる。ポイント、いろいろな方向を指差すような振り付け、スクーバ―、スクービードゥ、スキーターラビット……ソウルダンスのテイストをふんだんに取り入れたアフタービートのリズム取りが垢抜あかぬけて見える。

 終始ノリのいいファンキーなストリートダンスというよりは、ソウルダンスをベースにしたお洒落しゃれなクラブダンスという感じだった。

 それは誰もがストリートダンスとして、あまり想像していなかったダンスだった。想像以上に高度な大技と、お洒落でスタイリッシュな曲とダンスに意表を突かれた思いがした。


「カッコイイね」

「なんか見たことがない感覚のダンスだね。お洒落な感じ」

 美和子と香保子かほこが微笑みながら話す。


 客席を埋め尽くした観客たちは、また大きな盛り上がりを見せた。熱い声援の中で彼らのパフォーマンスが終わった。

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