第325話 秋の文化イベント(九)『ドン・キホーテ』の前に
ステージでは司会者の男性と女性が話で繋いでくれている。この間に
全員準備が整った。すみれと美織が
「お久し振りです」
「お久し振り。
すみれが微笑む。
「その節はいろいろとお世話になったうえ、ご迷惑までお掛けしてしまい、本当にすみませんでした」
見かけによらず丁寧な口振りの男性に
すみれが首を振りながら、
「いえいえ、ストリートダンスをやってるの……器用な人ね。なんで高知にいるの?」
「バレエをやめて学生をしてるんです」
「ええ、大学生?」
「はい」
「頭もいいのね。噂には聞いてたけど」
すみれが園香と真美、美和子と
「知ってた? 彼が大学にいるの」
首を振る四人。真美が、
「あんた、どこの学部におるん?」
と聞くと、
「え! 鹿島真美さん? コンクール出てた鹿島さんだよね。なんでここにいるの?」
彼も真美のことを知っていた。先程、山野バレエの『バヤデルカ』が終わったとき、少し話した中で、真美が彼のことを知っていたのは分かっていたが、彼の方も真美のことを知っていた。
「私も今、学生で、バレエは、一旦やめて、また、やっとんねん。なんかめんどくさいけど、つまり、そういうことや」
「何かよくわからないけど。そうなんだ」
「一緒のキャンパスにおるん?」
「僕は医学部だね」
「めちゃ頭いいやん。え? どういうこと? このストリートダンスのチームみんな医学部かい、このやんちゃな感じのみんな」
「いや、全員じゃないけど」
「ふうん」
話を聞いていたすみれが、
「今はちょっと時間がないけど、また、日を改めて花村バレエに来ない? 話したいこともあるし」
多岐川は申し訳なさそうな表情で、
「いいんですか? 稽古場に行っても、まあ、
「青山青葉バレエ団の入団は断ったけどね」
「すみません」
「まあ、医学部にいるって話だと、あの時言ってた、お家の事情というのは本当らしいわね」
すみれの言葉に繋げる様に、横から
「あなた、この世界で、すみれさんの言葉に
パシッと、すみれが瑞希の頭を
「まあ、いつでも訪ねてきてよ。稽古場の場所は知ってるでしょう」
「はい、伺います。舞台、ここで観させて頂きますね。優一さん、ソロルすごかったですね」
「ありがとう。でもコールドも素晴らしかっただろ」
優一が微笑む。
「ええ、あのバレエ教室、よくあの人数がそろえられたなと驚きました」
「本当だよね」
横から真美が、
「私はあんたの髪に驚いたわ」
と言い、皆に微笑みが広がった。
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