第28章 秋の文化イベント

第317話 秋の文化イベント(一)イベント前の会場で

 文化イベントは市内の中心にある公園に設置された大きな野外ステージで二回行われる。

 翌週、県西部で同じような文化イベントがあり、ここでは地元の市民ホールで二回行われる。

 この二つのイベントは出演団体は異なるが、二つのイベントとも花村バレエと山野バレエは出演することになっており、今日と来週の日曜日、昼夜二回出演することになっている。


 午前中、園香そのかたちがイベント会場に到着すると、山野バレエの生徒たちが集まっていた。控え室として公園に隣接するビルの部屋が数室が用意されていた。公園に設置された舞台の前には既に人が集まり始めている。公園の周りにはいろいろな食べ物を売っている出店でみせも準備を始めている。お祭りの雰囲気が公園を包み始める。


 すみれと美織みおりが一緒にステージに近付いてみる。ステージは思ったより広い感じがした。いろいろな出し物があるが、地元のよさこい踊りやストリートダンス、日本舞踊と踊りの出し物も多いイベントだけあってステージはリノリウムも敷いてあった。バレエを披露する花村バレエや山野バレエにとって、条件の悪い舞台ではなかった。それでも念のため踊る前にはステージを雑巾掛ぞうきんがけさせてもらうように言ってあった。


 園香たちがきょろきょろと周りを見ていると、真理子とあやめが佐和たちのお父さんである松井社長と一緒にやって来た。イベントの主催団体の人たちも一緒にやって来る。

「今日は頑張ってよ」

 と笑顔でやって来る松井社長に、真由が、

「パパ」

 と言って飛び付いていく。すみれと美織が真由のお父さんに挨拶する。真由のお父さんもすみれたちのことはよく覚えていて楽しそうに挨拶を交わしていた。

「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく。いつも子どもたちがお世話になっています」

 一見、豪快に見えるが、丁寧で紳士的な所作や話し振りは好感が持てた。優一とも何か楽しそうに話していた。すみれが改めて十一月のホールの件もお礼を言う。真理子やあやめもそのことで微笑みながら話していた。

 一緒に来たイベントの主催団体の人が、もう一度、ステージ周りの控え室や舞台袖ぶたいそでに簡易に用意してある更衣室について説明してくれた。更衣室は簡易に設置された部屋とはいえ、ちょっとした事務室程の広さがあり、大人が同時に五、六人でも着替えれるくらいの部屋だった。

 このイベントは開催され始めて既に数年が経っており、年々、ステージの周りの環境も改善されているようだ。屋外ステージであるが舞台周りの環境は決して悪いものではなかった。

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