第316話 前日リハーサルを終えて

 リハーサルが終わり、すみれたちのところに知里ちさとのお母さんがやって来た。

「今日はすみませんでした」

「いえ、踊りの事は大丈夫ですよ。二人ともケガもなかったようだし」

 すみれが微笑みながら言う。

「本当にご迷惑をかけて……」

「迷惑なんて、それより、何か困っていることとか悩みがあれば、相談に乗れることは乗りますので、遠慮せずに言ってくださいね」

 と言うと、

「ありがとうございます」

 と安心した様に頷き、お母さんと知里は帰った。


 すみれが真理子とあやめに、

「なにかあるんですか? 知里ちゃん」

 と聞くと、真理子たちも何も聞いてないようだった。すみれが微笑みながら、

「踊りは大丈夫ですよ。でも、少し気に掛けて見てあげましょう」

 と言う言葉に、真理子たちも、もう一度顔を見合わせて頷いた。


 ゆいと真由が元気に挨拶をして帰って行った。他の生徒たちも次々に帰って行く。

 山野バレエの生徒たちが全員でやって来て挨拶をして帰った。


 生徒たちが帰った後、山野美佐子と詩保が真理子とあやめのところに来て、もう一度、明日のことを確認した。そして、すみれたちのところに来て、二日間のリハーサルのお礼と、これからも普段のレッスンを見て欲しいと依頼してきた。山野美佐子バレエスタジオで、週に何日かレッスンをしてもらいたいという話だった。

 真理子とあやめは、是非、レッスンをさせてもらったらと、すみれと美織みおりに勧めてくれた。すみれたちもレッスンをさせて頂くことは嬉しいことだと、後日、改めて詳細を打ち合わせるという話になった。

 美佐子と詩保は懇願するように、

「うちのバレエ教室は、今回の文化イベントでは、小学生高学年から中学生、高校生までの生徒が主な出演者となったが、今回イベントに参加しない小さな子どもから小学生低学年、大人クラスも見てもらえたら、きっと生徒たちも喜ぶだろう」

 と言った。

 すみれたちも快い返事をしたが、花村バレエのレッスンも受け持っているので、やはり詳細は後日ゆっくり話し合うということになった。

 以前、バレエフェスティバルの前、美織と優一にレッスンを見て欲しいという依頼はしてあったが、美織や優一たちも忙しく、まだ、具体的な話はできてなかった。

 今回、すみれたちから改めてレッスンの承諾をしてもらえたことは、山野美佐子、詩保にとっても大きな収穫だった。


 こうして、文化イベント前日のリハーサルを終え、明日の本番を迎えることとなった。

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