第309話 バレエ『ラ・バヤデール』物語(二)
第一幕・第三場
婚約を披露する祝事
美しい花や木々が茂る庭園。大きなパゴダ(仏塔)がそびえ、青い空に届かんばかりの天頂に白い雪をかぶったヒマラヤの山々が見えています。
ガムザッティとソロルの婚約を披露する華やかな式典が催されています。
王(ラジャ)をはじめ王宮の侍女や従者たち、大僧正はじめ寺院の僧侶、舞姫(バヤデール)や様々な人が呼ばれています。
そして、その中にはニキヤもいます。
祝事の式典が始まります。
壺の踊り、太鼓の踊り、兵士たちの踊りなど様々な踊りが披露されます。
ソロルとガムザッティの踊りも披露されます。
(※ここで踊るソロルのヴァリエーションとガムザッティのヴァリエーションはコンクールやいろいろな発表会でよくおどられます)
華やかな式典の中に顔をヴェールで隠したバヤデールがいます。それはニキヤです。
王(ラジャ)はニキヤにも式典に参加するよう命じていました。
ソロルはニキヤに気付き愛おしい気持ちと申し訳ないと思う気持ちでいっぱいになります。
大僧正はソロルを憎々しい思いで見ています。
ガムザッティの心にはニキヤへの怒りがこみ上げてきます。
バヤデールのニキヤが踊るときがきます。美しく踊るニキヤ。
ガムザッティは侍女にニキヤに花かごを渡すよう命じます。
花かごを受け取り踊り続けるニキヤ。突然、花かごから毒蛇が出てきてニキヤにかみつきます。
ニキヤはその場に倒れ、その場に居合わせた一同は騒然となります。
ニキヤを抱きかかえるソロル。ニキヤはソロルに、
「誓いを忘れないでください……」と言います。
大僧正もニキヤのそばに駆け寄り解毒剤を渡そうとしますが、ニキヤは大僧正の手を払いのけ、
「きっと神様が裁きを下します」と言います。
そしてニキヤはソロルの腕の中で息絶えます。
王(ラジャ)と王女ガムザッティはこれでよいのだと去っていき、式典は終わります。
第二幕・第一場
ソロルの部屋
ソロルは後悔の念で部屋の中をさまよいます。
(※この場面の曲は発表会やガラ公演などでソロルとニキヤのパ・ド・ドゥを演じる際、この曲から入ることが多い)
ソロルは疲れ果てて椅子に横たわります。
そして、それを見ていた従者が悲しみを紛らわすために阿片を吸うことを勧めます。ソロルは言われるままに
第二幕・第二場
影の場(影の王国の場)
幻覚の世界
この場面はこのバレエ全幕を通して一番有名な場面と言えると思います。
バレエ・ブラン(白のバレエ)白一色の衣装で群舞が踊られます。
白い衣装一色の群舞は「白鳥の湖」「ジゼル」にもありますが、「白鳥」は湖、「ジゼル」は亡霊たちが集まる墓場での群舞に対し、「バヤデール」の群舞は幻影の世界。
バレリーナの白の衣装、白のヴェール。透き通るような青とも白ともつかない美しい照明。舞台の空気に、床に、白いバレリーナたちの幻影が映っていると思われるほどの透明感。そして美しい曲。
「美しい」の一言に尽きるコール・ド・バレエ(群舞)です。
ソロルは後悔の気持ちの中で、再びニキヤと出会います。
ニキヤとソロルが美しいパ・ド・ドゥを踊ります。
ソロルはニキヤに問います。私はどうすれば許してもらえるのかと……
ニキヤはいいます。
誓いを守ってくれれば、きっと黄泉の国で魂は安らぎを得るでしょう。
第二幕・第三場
ソロルの部屋
ソロルは幻覚の世界から目覚めます。
そこへ王の召使たちがやってきて王女との結婚の儀式の準備を始めます。
第三幕
神の怒り
王宮の大広間(結婚式)
王宮の大広間は厳かな雰囲気に包まれています。荘厳な広間は寺院の様相もあり中央にはブロンズの像も飾られています。
ここで『ブロンズの像の踊り』が踊られます。
(※『ブロンズの像の踊り』が第一幕・第三場の婚約の披露宴の場で踊られるものもあります)
大勢の客人が結婚の儀式に招かれています。
大僧正、僧侶、バヤデール、王宮の従者たち……
王女・ガムザッティは王(ラジャ)と一緒にたくさんの従者を従えて現れます。
ソロルも現れます。
王(ラジャ)は祝宴を始めます。
大僧正が婚礼を挙行しようとしたとき、空に暗雲が立ちこめ、雷鳴がとどろきます。大地が揺れ動き、稲妻が走ったかと思うと寺院の建物が崩れ始めます。
慌て逃げ惑う参列者たちを覆いつくすように建物の瓦礫が崩れ落ちてきます。
それはブラフマン、ヴィシュヌへの誓いを破ったソロルや神への信仰を失った王宮の人々への天罰が下り、破壊神シヴァが世界を浄化するように……すべてが崩れ去っていきます。
すべてが崩れた王宮。
ニキヤとソロルの魂は天で結ばれます。
◇◇◇◇◇◇
※『ラ・バヤデール』(フランス語)
※『バヤデルカ』(ロシア語)
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