第308話 バレエ『ラ・バヤデール』物語(一)

バレエ『ラ・バヤデール』

La Bayadère


曲:レオン・ミンクス

振付:マリウス・プティパ

初演:ボリショイ・カーメンヌイ劇場 一八七七年


登場人物

ニキヤ(寺院の舞姫・バヤデール)

ソロル(王宮の戦士)

ガムザッティ(ラジャの娘)

ドゥグマンタ(ラジャ・王)

大僧正(寺院の権力者)


(物語)

第一幕・第一場

舞台は古代のインド。


 寺院に仕える舞姫(バヤデール)ニキヤにはソロルという恋人がいます。

 ソロルは王宮の戦士です。

 ある日、森にある寺院で「火の祭り」が行われます。

 舞姫たちは美しい踊りを奉納します。祭りを取り仕切る寺院の大僧正は舞姫の中で、ひときわ美しいニキヤに心を奪われます。

 大僧正はニキヤに近づいてきますが、ニキヤはそれを拒みます。

 祭りの終わりに、ニキヤとソロルは愛を誓います。

 このことを知った大僧正は怒り、ソロルへの復讐を企てます。


(※このあたりの演出は様々ですが、ここでソロルが「寺院の前で愛を誓う」ということは、ヒンドゥー教の神である、ブラフマン(ブラフマー・創造神)とヴィシュヌ(保持神)に証人になってもらいニキヤに永遠の愛を誓うということになります。)

(※ヒンドゥー教の神の体系ではブラフマン(ブラフマー・創造神)、ヴィシュヌ(保持神)、シヴァ(破壊神)は三位一体ということです)


第一幕・第二場

 宮殿では、王(ラジャ)が娘のガムザッティにソロルと結婚するように言います。

 王はソロルにもガムザッティと結婚するよう命令します。

 ここでソロルは王から、幼いころから王女・ガムザッティの花婿になることは決められており、王宮の戦士として育てられたことを告げられます。

 ニキヤと永遠の愛を誓っているソロルは動揺します。


 そして、ソロルは目の前にガムザッティが現れたとき、ガムザッティのあまりの美しさに心を打たれます。

 ガムザッティはソロルが困惑している様子を見て、一瞬でソロルが自分を愛していないことに気づきます。しかし、自分が王女であること、王(ラジャ)である父親の命令は絶対であることから、ソロルと結婚するという決意を貫かねばならない……という強い意志を固めます。

 ソロルは王(ラジャ)に対し、光栄な言葉であるが王(ラジャ)の期待に沿うことはできないと言います。しかし、王(ラジャ)は、そんな、ソロルの言葉は聞き入れません。

 三日後に結婚式を挙げると告げられます。


 その後、大僧正がやってきます。ニキヤに好意を持っている大僧正は、彼女と愛を誓っているソロルを憎々しく思っています。

 ソロルが去った後、王(ラジャ)に「ソロルはバヤデールのニキヤを愛している」ということを告げます。

 王(ラジャ)は怒りますが、その怒りの矛先はガムザッティの花婿になるソロルではなく、ニキヤに向きます。

 王(ラジャ)はニキヤを殺害するよう企てます。

 自分の言葉が思わぬ方向に向かった大僧正はあわてます。「寺院の舞姫(バヤデール)であるニキヤを殺すことは神(ヴィシュヌ)の怒りにふれ、天罰が下るであろう!」と進言しますが、王(ラジャ)は聞き入れようとしません。

 その会話のすべてをガムザッティは物陰で聞いていました。


 ガムザッティはソロルのことについてニキヤと話し合おうとします。侍女にニキヤを自分の部屋に呼んでくるように命じます。


 ニキヤはこれまでの話を知りません。


 ガムザッティに呼ばれたニキヤは初めて間近で王女を見ます。

 うわさ通りの美しい王女にニキヤは敬意を払い深々とお辞儀をします。

 ガムザッティは近々せまった結婚のことを語り、それにさきがけて婚約を披露する祝事がとり行われることを話します。そして、その祝事でニキヤに踊ってほしいといいます。

 ニキヤは名誉なことだと喜びます。

 ガムザッティは自分の結婚相手をニキヤ知らせるため、部屋に飾ってある大きな肖像画を指さします。

 ガムザッティの結婚相手がソロルであることを知ったニキヤはおどろきのあまり気が狂いそうになります。

 ガムザッティはニキヤにソロルをあきらめるよう宝石や金を差し出しますが、ニキヤは説得に応じません。宝石や金をガムザッティの足元に投げつけ、なおも説得しようとするガムザッティに近くにあった短剣を振りかざそうとしますが、侍女に止められ部屋を去っていきます。

 ガムザッティはニキヤを殺すことを心に決めます。

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