第302話 花村バレエに帰って
その日の新高輪フィルハーモニーから、一度、
青山青葉バレエ団のスタッフと青葉、徹が真理子たちを空港に送ってくれた。
青葉も徹も新高輪フィルハーモニーの時と同様、皆に協力してもらう考えでいいと思うと言ってくれた。
慌ただしい東京への旅行となったが、真理子もあやめも、今回は大きな収穫があったように思えた。
◇◇◇◇◇◇
最終便で高知空港に着くと、もうすっかり夜だった。
タクシーで高知市内のスタジオに帰ってくると、その日の稽古は終わっていた。稽古場には、
そして、この日も美和子と
「真理子先生、あやめ先生」
唯が元気な声で迎えてくれた。真理子もあやめも疲れていたが、なんだか元気になれた。
唯や佐和たち姉妹は間もなく帰った。
すみれと美織がやって来た。
「お疲れ様です。新高輪フィルハーモニーに行かれてたんですか?」
「ええ、すみれさん美織さん少しお時間よろしいでしょうか?」
真理子が二人に声を掛ける。
すみれと美織は顔を見合わせ頷く。
「ええ、いいですよ」
微笑む美織。
「何か
すみれが笑顔で質問を投げかける。
「ええ、そうなんです」
と、真理子が新高輪フィルハーモニーでの恵那たちの提案の話をした。
真理子とあやめが恵那たちの提案の後、少し時間をもらいたいと言ったのには、東京での舞台経験、オーケストラ演奏での舞台経験が豊富であるすみれと美織の意見を聞きたかったということがあった。
すみれたちは真理子の話に耳を傾け、微笑みながら、
「いいじゃないですか。恵那さんたちの提案通りで」
美織も、
「いいですね」
と賛同する。
真理子が、
「よく知らないけど、青山青葉バレエ団さんも、こんな感じでやってるの?」
と聞く。
この質問には、さすがに美織も内情をよく知らないという表情を見せたが、すみれは詳細までは知らないまでも、少しは知っているという様子で話してくれた。
「ううん、結構その辺は、複雑な感じですね。オーケストラが恵那さんのところじゃないときは、そのまま大きいお金を支払ってるようですが、恵那さんのところとは付き合いも長いし、お金は支払うんだけど、結局、新高輪フィルハーモニーがスポンサーとしてパンフレットに広告載せてくれたりして……なんか、うまくやってるみたいですよ」
美織も瑞希も、この辺のカラクリをよく知らなかった。
瑞希が笑顔で、
「うちの
と言う。これは真理子もあやめも純粋に嬉しかった。
真美も続けるように、
「美香先生とこも協力したいって言ってました」
「ええ! 宮崎先生が?」
あやめが驚くように聞き返すと、夏に大阪に行ったとき、真美にそんな話があったらしい。その時は、まだ先の事なので正式に決めたら、また、真美を通じて連絡するということだったらしい。
このタイミングで言ってよかったのだろうかと園香は思った。
美和子と香保子も、よくはわからないが、花村バレエの中枢を成すメンバーの話が聞けて何か嬉しい気持ちになれた。
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