第292話 驚きの連続 美和子と香保子

 優一を真ん中に、すみれと美織みおりが両脇に立って踊り始める。この踊りも本当に誰が主役かわからないほどのレベルの高さだ。

 一通り踊り終えるとゆいと真由が大喜びで拍手する。周りで見ていた見学者たち全員が大きな拍手を送った。

 美和子と香保子かほこも驚いた表情で顔を見合わせる。真美と瑞希みずきが目線を交わしながら頷く。

 前で見ていた真理子とあやめも拍手をしながら微笑む。その後、真理子とあやめが、すみれと美織のところ行き何か話していた。少し話した後、真理子たちは教室から出て行った。後から聞くと、今回の文化イベントの件で、今から主催団体の人たちと打ち合わせがあると言う。


 この後のキッズクラスのレッスンは秋山が担当し園香そのかや真美、美織たちが手伝う。その間も美和子と香保子はずっとレッスンの様子を見学していた。


 すみれが美和子たちに声を掛ける。

「熱心ですね。疲れませんか?」

 秘かに憧れ、尊敬の念を抱いていた二人は、すみれから思いがけず声を掛けられ緊張しているのが伝わってくる。

「はい、こんなに間近でバレエのすごい踊りを見たのは初めてだったんで驚きました」

 と美和子が答える。

「そうですか」と、すみれが微笑む。

「あのお、有名なバレエ団のすごい方なんですか?」

 香保子が恐る恐る聞いてみる。

「東京の青山青葉あおやまあおばバレエ団というところについ最近までいたんです」

 と、すみれが答えると、隣から千春が、

「名門バレエ団のトップの四人だったのよ。この人たち。すみれさんと美織さんと優一さんは、ついこの前、世界のトップダンサーが出演するバレエフェスティバルというバレエの祭典に出演してたの。で、あちらの瑞希さんは、今度、国際コンクールに挑戦するの」

「すみれさんと美織さん、優一さんは国際コンクールで一位取った人たちよ」

 千春の隣にいた大人クラスのレッスン生の言葉に、更に驚く美和子と香保子。

「せ、世界一の方たちですか……」


 すみれが微笑みながら、美和子と香保子に、

「バレエ一緒に練習しましょうね」

 と言うと、二人とも背筋を伸ばすようにして、

「はい」

 と返事をした。


 すみれが微笑みながらキッズクラスのレッスンを見て回る。すみれが近付いて行くとゆいと真由はニコニコしながら、すみれに視線を向ける。


 レッスンの終わりにキッズクラスの生徒たちは、今日もキャンディの踊りを練習する。これは文化イベントでも踊ることになっている。子どもながらにきちんとバレエのポジションを意識しながら踊っている姿に、美和子と香保子も感心して笑顔で拍手を送った。


 キッズクラスの後、小学生高学年以上のオープンクラスのレッスンがある。その間の少しの時間で、瑞希と優一の『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ、園香の金平糖の精の踊りを練習する。どちらも、すみれが細かいところを注意し修正していく。

 美和子と香保子は、園香の金平糖の精の踊りのレベルの高さにも驚いたようで、踊り終わった園香のところにやって来て「すごいね。驚いたよ」と思いを伝えてきた。


 そして、小学生高学年以上のレッスンが始まった。

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