第24章 文化イベントのリハーサルが始まる
第291話 バジルとキトリの友人の踊り 北村・秋山・優一
その後、続けて稽古場では北村、秋山と優一の踊りを通す。この曲もバレエ『ドン・キホーテ』の第一幕を代表する華やかな曲だ。主役バジルを真ん中にキトリの友人女性二人が踊る。
舞台を大きく使う三人の踊りに
すみれや美織、瑞希の前では、いつも少し緊張気味に踊っていた二人が、これほど楽しそうに生き生きと踊る姿は久し振りに見た気がして
優一の雰囲気がそうさせるのだろう、緊張のほぐれた二人の踊りは、一つ一つのテクニック表現も柔らかい。その中で踊る優一の踊りは、まさに主役バジルそのものだった。
すみれも微笑みながら三人の踊りを見る。その視線に北村と秋山も気が付いているようで、いつもと違ってリラックスした様に自分たちの表現を存分に見せる。
周りで見ている園香や真美、小さな唯たちも他の見学者も、三人の踊りに引き込まれる。美和子と
◇◇◇◇◇◇
踊りは男性バジルを中心に女性二人が左右に並び、舞台後方から踊りが始まる。
舞台の後方に三人が横並びで立つ。男性がその場で軽く真上にジャンプし、着地するのと同時に曲が始まる。三人が舞台の後方から前方に横並びで出てくる。
そして、三人でランベルセを四回。
男性が八の字を描くように移動しながら左右の女性と交互に円を描くように踊る。
そのまま三人が交差する様に踊りながら舞台後方に移動する。
その後、スペインの踊り特有の細やかな足さばきとフラメンコを思わせるような腕と上体を大きく使った踊り。
最後はまた三人が舞台の前方に出てきて、中央の男性がターン、あるいはジャンプして空中でターンするテクニックを見せ、三人でポーズを取る。
曲も踊りも華やかで大きな見せ場となる踊りだ。
北村も秋山もこの踊りは何度か踊った経験があり、多少の振り付けの違いはあっても、振りも表現もダイナミックに華やかに踊った。
すみれも美織も特に言うこともないという感じだ。
すみれが北村と秋山に微笑みながら、
「すごくいいじゃないですか。細かいところで気付いたところは、また、これから言っていきます」
と言った。北村と秋山も安心した様に顔を見合わせた。
「すみれ先生、美織先生踊って」
「ええ?」
鏡の前で笑顔で見ていた唯の言葉に、すみれが少し困った顔をする。
「お願いします」
北村も秋山も声を合わせる。
すみれが微笑みながら、
「美織、大丈夫?」
すみれが美織の方に微笑む。
「はい、優一、大丈夫?」
美織が優一の方に微笑む。
「え?」
優一が目を丸くして、
「いや、別に大丈夫だけど」
と答える。
「
「じゃあ、キトリは瑞希なの?」すみれが瑞希に視線を向ける。
美織が、
「その時は、キトリは瑞希と真美ちゃんにやってもらいましょう」と、すみれに言う。
「いやいや、とんでもないです。
「エスパーダは?」美織が聞く。
「哲也さん……いや、やっぱり、キトリはすみれさんと美織さんで
「あなた、それを
「メルセデスは?」瑞希が聞く。
「メルセデスは多香子か、さやかじゃない」と言う、すみれに、
「いい」と美織が微笑む。すみれが微笑みながら、
「でも、瑞希が言う通り、ドン・キホーテは
と言って皆が笑う。
園香は、そんな話を聞きながら、あの名門
そう言えば、真美が『くるみ割り人形』でスペインの踊りに決まった時も、美織が「すみれさんが
◇◇◇◇◇◇
作品の中で、サン・チョパンサはドン・キホーテの従者、小太りで、町の人々からからかわれる。コミカルな演技が必要とされる役だ。ガマーシュというのはキトリに求婚する金持ち貴族で少し風変わりな男性。女性的に演じられることも多い。ドン・キホーテは、このバレエ『ドン・キホーテ』では騎士道にのめり込み、自分を勇敢な騎士と思い込み、従者サン・チョパンサと共に憧れの姫ドルシネアを求めて旅をする。
――――――
〇ランベルセ
右回転のランベルセの場合、左足軸に立つと同時に右足アチチュードで体を右回転させる。この時状態は少し左に倒すようにしながら回転する。
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