第273話 朝ストレッチをしながら
その後しばらくの間、どうでもいいような話をしながらストレッチをしていると真美がやって来た。
真美は昨日エトワールで食事をした帰り、皆と話をする中で、
しかし、来てみると既に、こんなに早い時間に
園香は、美織やすみれ、
そう思いながら、彼女たちの話に耳を傾けていると、瑞希が園香に聞いてきた。
「園香ちゃん、ここのバレエ教室は年に二回発表会をやってるんだっけ?」
「はい、春と秋にやってます。」
「え? 十二月って秋なの?」
瑞希の言葉に、園香が説明する。
「ああ、それは十一月にあったり、今年みたいに十二月にあったりっていう感じなんです。春は四月か五月か、あまりきちんと決まってない感じです」
「ふうん、じゃあ、私たちがここに来る少し前に発表会があったの?」
「そうです。四月の終わりに」
「ふうん、私たちが来たのが五月だから、本当に少し前にあったんだね」
「春はバレエコンサート形式でするんです。第一部はバレエコンサート形式で、第二部は、何かの作品を抜粋でやったりするんです、何かの作品の一幕だけをするみたいな形で……」
瑞希が興味津々という感じで更に聞いてくる。
「え、と、公演で『眠れる森の美女』をやったって言ってたよね。それが年末だったの?」
「ええ、そうです、そうです『眠り』は昨年の十一月の公演です。四月の発表会は、第一部がバレエコンサートで、第二部が『ワルプルギスの夜』だったんです」
美織やすみれも興味を持って聞いていたようで、美織がストレッチをしながら聞いてくる。
「へえ、そういえば、その四月の発表会の事は聞いてなかったな。園香ちゃんは、その発表会では何をやったの?」
すみれと瑞希、真美も園香の方に視線を向けてくる。
「私は第一部は『ジェンツァーノの花祭り』のパ・ド・ドゥ。第二部の『ワルプルギスの夜』は、特に役はなくて皆で踊る踊りでした」
「ふうん『ジェンツァーノ』なんだ。ブルノンヴィルスタイルだ」
瑞希が微笑みながらブルノンヴィルスタイルと言う。瑞希はそう言うが、園香にしてみたら、教えられた振り付けを踊っただけだ。別に細かいバレエのスタイルから教えられて踊ったわけではない。
――――――
〇ブルノンヴィルスタイル
オーギュスト・ブルノンヴィルにより考案されたバレエのメソッド。バレエのスタイル。細かい足さばきが多く。女性の踊りでも三十二回転のグランフェッテなどはなく、男性の踊りでもアラセゴンドターンのような大胆なテクニックが目立つ踊りはなく。また、マネージュ(舞台を大きく円を描くように周りながらジャンプやターンをする踊り)などもない。どちらかといえば繊細で、細やかなテクニックが散りばめられた踊りが多い。
〇グランフェッテ
女性がグラン・パ・ド・ドゥのコーダなど作品の中の最大の見せ場で見せる技術。
軸足をドゥミ・プリエ(踵が上がらない位置まで膝を曲げる)から一気にポワントでつま先まで立つ。この時もう片方の足を同時に体の正面から真横九十度の高さまで振り腕と振る足に軸を取られないよう一回転し、正面やや手前で軸足はドゥミ・プリエに下りる。振る足は回転しながら徐々に体の正面まで戻し、また同じように一気に軸足で立ちもう一方の足を振る。これを繰り返して十六回転、あるいは三十二回転回る技術。
〇アラセゴンドターン
男性の回転テクニック。フェッテの要領で右回転(左足軸)のターンの場合、右足を振って一気に立ち上がるところまでは同じであるが立ち上がったあと、右足を巻き込まず、足は膝を伸ばして横九十度に上げたまま回転を続ける。
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