第269話 気になる園香たち

 園香そのかと真美は、すみれのことが気になっていた。同じくらい美織みおりのことも気になっていたが話の流れから、すみれにスポットが当たった質問になった。もう一度、園香が優一に聞く。


「優一さん、すみれさんって、どうしてあんなにすごいんですか?」


 園香の言った一言は周りにいた全員の注目を集めた。園香たちのテーブルだけでなく、隣のテーブルに座っていた瑞希みずきゆい、唯のお母さん、佐和や理央りお、真由、彼女たちのお母さんも、園香の質問に意識を集中しているように思えた。この話に関しては康子や佐由美、麗子も詳しいことをきちんと聞いたことがなかったようだ。

 つまり、花村バレエのメンバーだけでなく青山青葉あおやまあおばバレエ団の団員も初めて聞く話だった。


 すみれに憧れを抱き、着る物も身に付ける物も、すみれと同じ物にするほどの瑞希みずき。彼女にとって、すみれは大スターである。大スターであるが、知らないことが多過ぎる存在でもあった。


 園香は後から聞いた話だが、瑞希みずき恵人けいとはバレリーナ、バレエダンサーとして、青山青葉あおやまあおばバレエ団でプリンシパルという立場にあるが、今回、来ている団員の中では意外にもバレエ団員歴は短いらしい。

 瑞希と恵人は小さい頃から小学校の高学年まで、自宅である河合恵子かわいけいこバレエスタジオで母親と父親からバレエを習っていた。

 二人が青山青葉あおやまあおばバレエ学校に行き始めたのは小学校の高学年からだそうだ。自宅がバレエ教室ということもあり、バレエ自体はいつから始めたかもわからない。気が付いたら稽古場にいてバレエをしていたということで、年齢が彼女たちのバレエ歴という感じだが、青山青葉あおやまあおばバレエ団において団員たちの小さい頃の話はあまり知らないし、知っていても人から聞いて知っているという感じだった。


◇◇◇◇◇◇


 すみれの子どもの頃の話は、彼女の同期、彼女の先輩でなければ、青山青葉あおやまあおばバレエ団の団員でも知らないらしい。

 そして、誰もが弟の優一なら知っていると思いながらも、すみれの個人的なこととあっては、何か彼女のことをさぐっているように思われるのも嫌だったので、なんとなく聞きにくかった。

 バレエ団で、神とも呼ばれ、雲の上の人という感じのプリンシパルすみれの事である、誰もが気軽に聞き回るようなことができなかった。


 優一が園香に微笑みながら聞き返す。

「どうして、あんなにすごいかって?」

 園香ばかりか周りにいた者全員が頷く。

 優一は少し考えるようにして、

「どうして、すごいかってことについての答えにはなってないかもしれないけど、彼女が小さい頃、どんなだったかってことなら話せるかな」


 皆が興味津々という感じで優一を見つめる。小さな唯も、真由も興味深そうに優一を見る。

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