第265話 衣装付き通しリハーサルが終わって

 リハーサルが終わって、少しの休憩を取った。この間に全員衣装から普段の稽古着に着替えた。すみれと美織みおりが真理子、青葉あおばとおるのところ行き、何か話をしている。


 全員が着替え終わったところで、真理子が声を掛ける。

「皆さんお疲れでしょうが、後少し頑張ってください。今日のリハーサルでやったところを振り返ります。十分後に始めますのでよろしくお願いします」

「はい」と全員から返事が返る。キッズクラスのゆいや真由も、

「はーい」と元気に手をあげて返事をする。

 衣装の由香が皆に声を掛ける。

「衣装、頭飾りで何か問題があったところは言ってきてくださいね」

「はい」と全員から返事が返る。

 唯たちキッズクラスの子どもたちも元気に返事をする。


◇◇◇◇◇◇


「では、早速、リハーサルの振り返りをします」

 すみれが全員の前に立って、第一幕の始まりのところから細かく指摘していく。


 この状況に見学席のお母さんたちも圧倒されるものを感じた。

 この公演の監修の青山青葉あおやまあおば青山徹あおやまとおるからの指導かと思いきや、今回来てくれているゲストダンサー、手伝いに来てくれている青山青葉あおやまあおばバレエ団のプリンシパル級のダンサーも全員差し置いて、すみれの指導が始まった。

 その姿は、青葉あおばも真理子もとおるも了承済みという感じで、周りの者も口出しする様子はまったくなかった。

 そればかりか全員がかしこまってその指導を聞いているようにも思えた。園香そのかと真美も背筋が伸びるような思いがした。

 すみれは七月の終わりから花村バレエにずっといる。ここのバレエ教室に来てくれるようになってから、心温まる親身になった指導を子どもたちにしてくれていた彼女は、いつしか、稽古場で優しいお姉さんのような存在になりつつあった。


 しかし、この状況の中で全員の前に立つ、すみれの姿を見て、居合わせた全員が思い出した。すみれという偉大な存在。彼女は、やはり、青山青葉あおやまあおばバレエ団で誰もが一目置く特別な存在なのだということをの当たりにした。

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