第258話 リハーサル あし笛の踊り

 あし笛の踊り

 松井佐和まついさわ森岡玲子もりおかれいこ月原静つきはらしずか


 佐和は公演練習を始めるのが遅かったが、既に玲子のレベルに完全に追いついている。フランスの踊りともいわれるパ・ド・トロワ『あし笛の踊り』は民族舞踊のの要素はなく純粋なクラシックバレエのパ・ド・トロワ(三人で踊る踊り)である。


 この踊りの前に代役で『スペインの踊り』を踊ったしずかは、園香そのかや周りの目から見ても、体力的な疲れより、真美に圧倒されて少々自信なさそうに踊っているように思えた。


 通しリハーサル中にもかかわらず、

しずか! 集中しろ!」

 と、すみれから活を入れられた。


 その声にビクッとするゆいと真由。次のキャンディボンボンの出番を舞台袖ぶたいそで(稽古場の端)で待っていた二人が目を丸くして、すみれの方を見る。


 しかし、しずかは気を取り直し、奮起する様に踊り始めた。一緒に踊っていた佐和と玲子も最初は少し踊りにくそうにしていたが、すみれの一言で空気が変ったように生き生きと踊り始めた。静が二人を美しくサポートして見せる。

 佐和と玲子の表情も、まるで別人のように見えた。真理子が二人に優しい視線を送り、微笑んで頷く。

 踊り終わってルベランス(お辞儀)をする三人。三人がチラッと、すみれを見たのがわかった。すみれが三人に微笑む。そのすみれの表情に、三人もやっと安心した様子だった。

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