第257話 リハーサル アラビアの踊りからトレパックまで

 そのあと、花村あやめと青山徹あおやまとおるによるアラビアの踊り。

 真美の踊りで盛り上がったスペインの踊りの後であったが、まったく雰囲気の違う曲、雰囲気の違う踊りで稽古場の空気を一転させる。そこはさすがに二人とも百戦錬磨のバレエダンサーという感じで、先程の真美の踊りとは全く別の角度から、技術と表現力の高さで見ている者を魅了する。

 静かで官能的な雰囲気を漂わせる曲を、あやめの柔軟性と体幹の強さで美しく見せる。出演者、見学者ともに、青山青葉あおやまあおばバレエ団、花村バレエのトップダンサーの実力を見せられた感じだった。


 中国の踊りは、沖本心おきもとこころ三杉桂みすぎかつらという花村バレエの中学生女子二人と青山青葉あおやまあおばバレエ団の栗原寿恵くりはらとしえが踊る。

 こころかつらにとって少しお姉さんという感じの寿恵は親しみやすかった。実際に園香そのかも初めて会ったときから寿恵の持っているフレンドリーな雰囲気が好きだった。東京で青山青葉バレエ団に行ったときも、最初に彼女が声を掛けてくれたことで、気持ちが落ち着きバレエ団に受入れられた気がした。彼女独特の感じのよさ、どこかスッと自然にこっちのスペースに入ってくるような感覚が彼女の感じのよさなのだろうと思えた。

 この踊りも彼女のその空気がチームワークのよさを作っているようで早い段階から、どこかまとまりのある作品に仕上がっていた。


 ロシアの踊り(トレパック)は、来島樹くるしまいつき遠藤光えんどうひかる美川信也みかわしんやの男子三人組。仲のいい三人組で、いろいろなテクニックを身に付けることに積極的で好奇心旺盛な樹たちはできないなりにも、とりあえず挑戦してみるという姿勢が良い方向に出ている。

 この踊りは今回の公演の踊りの中で、第二幕のディベルティスマンとして、唯一、青山青葉バレエ団のゲストダンサー、関係者が一人も踊らない。花村バレエのダンサーだけで踊る踊りになる。

 実際にはキャンディボンボンも美織みおりは子どもたちと同じ踊りを踊るわけではないし、今となっては花村バレエの一員なので、この踊りも花村バレエの生徒だけで踊っていると言っていいのだが、純粋に最初から花村バレエにいた生徒だけで一曲踊るのはトレパックだけとも言える。

 普段のレッスンでは、優一や美織、瑞希みずき、すみれのアドバイスで難しい技術も少しずつ習得しているのだが、時々やって来るゲストの恵人けいとげんからすると想像以上に上達していると感じる。

 衣装係の由香が作った衣装、ブーツを履いて踊る。三人は思っていた以上に、違和感もなく、踊りやすいブーツに少し驚いた。ロシアの民族衣装を着て踊ると、普段より踊りがしっくりくるような感覚がした。

 周りで見ている真理子や青葉あおばも思いのほか、よく仕上がっているトレパックに少し驚いた。

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