第254話 九月通しリハーサル第二幕 リハーサルが始まる

 真理子の声で出演者全員が集まった。とおるが皆に第二幕のストーリーと舞台の流れを、もう一度簡単に説明する。

 幕が上がる前に、第二幕のあらすじをアナウンスする。当日のアナウンスの内容を説明も加えながら全員に話してくれた。


◇◇◇◇◇◇


 舞台はお菓子の国へ旅立ったクララと王子。二人はお菓子の国の川や湖など美しい景色の中を通り、お菓子の国の都に向かいます。

 お菓子の国の城に向かう途中、もう一度、ねずみたちが現れます。驚き恐れるクララですが、再び、王子はねずみたちを追い払います。

 ねずみたちがいなくなって安心するクララ。クララと王子はお菓子の国に到着します。


 お城に着くとファンファーレが響き、お菓子の国の饗宴が始まります……


◇◇◇◇◇◇


 このあと『スペインの踊り』から始まり『アラビアの踊り』『中国の踊り』『トレパック』『あし笛の踊り』『キャンディボンボン』『花のワルツ』と続き、金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ……

 お菓子の国で歓迎を受けたクララが金平糖の精として踊ります。


 そして、最後の『終曲のワルツ』


 と、ここまで、第一幕と違い、演技なしで踊りが続きます。この形式をディベルティスマンといいます。


 そして『終曲のワルツ』のあと、舞台は一度暗転あんてんして、次に、朝日が差すシュタールバウムの屋敷の大広間で目覚めるクララ……このときのクララは由奈ゆなちゃん……


 で、幕を閉じます。


◇◇◇◇◇◇


 出演者、スタッフ全員が頷く。キャンディのゆいと真由が顔を見合わせて微笑む。

 真美が下を向いて振りを確認する様に手先を動かしながら聞いている。

 すみれ、古都ことも衣装を着て聞いている。二人は『花のワルツ』で登場する。あのバレエフェスティバルで踊った二人が『花のワルツ』の衣装で準備している。

 美織みおりはキャンデイボンボンにジゴーニュおばさん役で登場する。作品によっては舞台装置のような大きな衣装で登場する役でもあるが、今回の演出では、そのような大きな衣装ではなく、貴婦人のような衣装で登場する。

 キャンディの小さな子どもたちの中に、ジゴーニュおばさんという大人の女性が登場して、キャンディたちの踊りを微笑ましく見守りながら踊るという印象だ。


 衣装スタッフの由香と一花いちかが一番意識を向けているのは、この『キャンディボンボン』の後、続けて『花のワルツ』に登場する美織の衣装の早替えだ。由香と一花いちかはいつも手にしているストップウォッチの一つを、花村バレエのスタッフで舞台に出演しない小林麗華こばやしれいかに託す。


 小林は、毎回、花村バレエの発表会、公演をスタッフとして舞台裏で支えてくれる。時々、普段の稽古も見てくれるが、教室の衣装の管理をいつもしてくれる。小林は、今回もスタッフに徹してくれている。


 とおるの一通りの説明が終わり、いよいよ出演者全員が第二幕のリハーサルの準備に入る。自分の出番に備え、それぞれの場所でスタンバイする。


◇◇◇◇◇◇


 とおるが本番通りのアナウンスをする。全員これから自分たちが演じる物語の内容に耳を傾ける。


 そして、アナウンスが終わると同時に第二幕が始まる。本番なら、このタイミングで幕が上がる。

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