第245話 九月通しリハーサル第一幕 アクシデントに備え

 大広間で、たくさんの子どもたちが楽しく遊ぶ。そして、大勢の大人の客人たちが周りで演技をする。この場面では、子どもも大人も踊る場面がある。子どもたちは元気に、大人たちは優雅に踊る。

 女性は子どもも大人も髪飾りを付け、美しいドレス姿に、男性は大人から子どもまで紳士的で華やかな衣装に身を包む。

 大勢の出演者が客人として演技をし、踊る場面だ。


 衣装の由香や一花いちかは舞台に出る前に全員の衣装をチェックするが、舞台上で何かが起こった時は、どうしてあげることもできない。

 そんな時に備えて、客人の中に、美織みおり、すみれ、瑞希みずき寿恵としえ、真美が衣装を着て入っている。彼女たちは一幕では踊らず、屋敷のお手伝いさんとして広間の端の方に立つ。

この場面で、招かれた客人として演技や踊りをするのは、子どもも大人も花村バレエの出演者たちだ。


 園香そのか由奈ゆなはともに、この作品の主役だ。由奈はクララとして、このクリスマスパーティーの大広間の場面は出ずっぱりだ。ずっと舞台の上に立っていることになる。

 園香は一幕の終わりに登場するが、そこまでは出番がない。この場面は舞台のそでから出演者たちを見守ることになる。


 そんな園香が客観的に見ても、この場面は、舞台上で何が起こっても、すぐに対処できるよう、青山青葉あおやまあおばバレエ団のダンサーたちが周りを固めているというのがよく分かる。


 舞台の進行をしているのはドロッセルマイヤー役の優一だ。最初、ドロッセルマイヤーを優一が演じると聞いたときは、園香も「優一さんが王子役じゃないの?」と思ったが、こうして見ると優一がドロッセルマイヤーをやってくれていることが本当に心強い。安心して見ていられると心から思った。

 そして、くるみ割り人形と、その魔法が解けた後の王子役は恵人けいとという青山青葉バレエ団のプリンシパルが演じる。

 さらに、この作品で重要な役ねずみの王様を演じるのはげんだ。彼は青山青葉バレエ団でも数々の悪役や重要な役を演じ舞台に華を添えている。

 七月に東京で観た『白鳥の湖』の中で、げんが演じたロットバルトも素晴らしかった。それは、ここ花村バレエの生徒も、たくさん観に行き、彼の表現力の凄さに圧倒された。


◇◇◇◇◇◇


 場面は三体の人形、ハレルキン、コロンビーヌ、ムーア人の場面へと続く。

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