第19章 九月の衣装付きリハーサル

第241話 九月『くるみ割り人形』今回の演出を伝える

 ここで、もう一度、とおるが舞台に係わる全員に『くるみ割り人形』の舞台の流れを説明する。


◇◇◇◇◇◇


「バレエ『くるみ割り人形』は全二幕の作品となっています。第一幕と第二幕の間に休憩時間があります」


 キッズクラスの子どもたちは興味津々という表情で聞く。とおるが子どもたちに微笑み話を続ける。


「第一幕はシュタールバウムの屋敷でクリスマスパーティーが行われます。ドロッセルマイヤーが、ハレルキンやコロンビーヌ、ムーア人の人形の踊りを見せてくれます。その後、みんなはクリスマスプレゼントをもらいます。クララは、少し変わった不思議な『くるみ割り人形』をもらいます。ここで、女の子たちは人形を気持ち悪がったり、男の子たちはクララをからかったりします」


 とおるが『くるみ割り人形』をみんなに見せる。ゆいと真由が顔を見合わせて微笑む。とおるが二人に微笑んで話を続ける。


「クリスマスパーティーの夜、主人公のクララは、ねずみの王様が率いる、ねずみたちと、くるみ割り人形が率いる兵隊人形の戦いに巻き込まれます。くるみ割り人形を手助けしたクララ。くるみ割り人形は、ねずみの王様を倒し、クララの愛で魔法が解けます。そして、もとの姿に戻った王子が、クララをお菓子の国に連れて行ってくれます。第二幕のお菓子の国では、クララはいろいろなお菓子の精たちから歓迎されます。お菓子の国で歓迎を受けて楽しい時間を過ごしたクララ……ここで『終曲のワルツ』を全員で踊ります……ふと、気が付くと、クララは、朝の日差しの中、シュタールバウムの屋敷の大広間で『くるみ割り人形』を抱いて目覚め……舞台は幕を閉じます」


 ゆいと真由が大きく頷き、拍手をする。その姿に、周りにいた全員に笑顔が広がり、少し緊張が和らいだ気がした。


 とおるも微笑んで話を続ける。


「今回の演出では、第一幕が始まる前と第二幕が始まる前に、スクリーンのような幕を使って文字でも読めるように映し出し、第一幕のあらすじと第二幕のあらすじをナレーションします。もう一つ……第一幕が始まる前に、もう一つのお話を紹介します。それは第一幕のお話の前にあるお話です。今回、皆さんが舞台で演じるお話の前にある物語をお話します」


 ゆいと真由ばかりでなく小学生や中学生、大人クラスの出演者も、何のことだろうという表情でとおるを見つめた。

 園香そのかと奈々も何の話かよくわからなかった。真美は分かっているというような表情でとおるを見つめる。美織みおりやすみれ、青山青葉あおやまあおばバレエ団のゲストやスタッフは皆知っているという感じだった。


 とおるがバレエ『くるみ割り人形』の前にある物語を語り始めた。

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