第240話 九月通しリハーサルの前

 衣装付きリハーサルが始まる。出演者全員が最初に登場するときの衣装を着て準備する。キッズクラスの子どもたちから大人クラスのレッスン生まで客人の衣装を着て楽しそうにしている。

 衣装係の由香、一花いちか美織みおり、すみれが何かを打ち合わせる様に話をしている。その向こうの方ではドロッセルマイヤーの優一とねずみの王様のげんが話をしている。

 瑞希みずき寿恵としえが雪の踊りを互いに踊っては、お互いの踊りをチェックしているようだ。その周りで二人のあやも踊りを見ながら何か楽しそうに笑っている。

 稽古場の前で、真理子ととおる青葉あおばが話をしている。


◇◇◇◇◇◇


 花村バレエでは公演や発表会の練習が近づくとキッズクラスや小学生低学年などの小さな子どもの、お母さんたちばかりでなく、中学生や高校生の生徒のお母さんたちも手伝いに来てくれる。

 キッズクラスの小さな子どもたちは客人の出番が終わったら、客人の衣装から、それぞれ、ねずみの衣装、兵隊人形の衣装に着替えさせてあげなければならない。

 今回、初めて舞台の手伝いをするお母さんもいるが、様々な舞台の手伝いを経験してきたお母さんもいる。そんな皆が協力して舞台を創り上げていく。

 しかし、それにしても、今回の舞台は、手伝いをしてくれる皆の間に、今まで経験したことがないほどの緊張感が漂っている。

 園香そのかの目から見ても、この青山青葉あおやまあおばバレエ団のスタッフに囲まれた稽古場の雰囲気、光景は、何か異様なものに見えた。


◇◇◇◇◇◇


 衣装係の由香と一花いちかが二人とも、それぞれストップウォッチを手に、いつも身に付けているたけの短いショートエプロンを腰に巻いて準備している。

 衣装やティアラ、頭飾りに、どんなトラブルがあってもすぐに手直しができるように備えているのだ。由香と一花いちかが客人の衣装を着た出演者たちを一通りチェックする。大きな問題はないようだ。

 一花いちかがクララ役の由奈ゆなの髪と頭飾りのリボンを見る


 真理子が全員に声を掛ける。

「では、今から第一幕を通しますが、最初に、青山青葉あおやまあおばバレエ団の芸術監督で、今回、花村バレエの『くるみ割り人形』でも芸術監督をして頂く青山徹あおやまとおる先生からお話があります」


 真理子が出演するダンサーだけでなく、周りにいるお母さんたちにも目を向ける。

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