第210話 文化イベントへの協力

 美織みおりが北村と秋山と一緒に青葉あおばとおるに話してくれた。青葉も徹も快い返事をくれた。

「今度の公演の宣伝にもなるんじゃない」

 とも言ってくれた。

「ステージはリノリウムとか、床の状態は大丈夫なの?」

 青葉が怪我を気にして少し心配そうに聞く。北村と秋山が昨年も参加させて頂いたことを伝え、他にも踊りを見せる団体がありステージにリノリウムは敷いてあったことを伝える。踊る前はスタッフでステージに雑巾掛ぞうきんがけをして滑って転倒などしないように十分準備することも伝える。青葉も徹も「頑張ってね」と応援してくれた。


 北村が恐る恐る、すみれに聞く、

「真理子先生とあやめさんには話してあるんですが、すみれさんや美織さんも踊って頂けませんか? あと曲の順番とか演出お願いできないでしょうか?」

 すみれが微笑んで瑞希みずきの方に目を向ける、

瑞希みずき、屋外ステージで踊れるんだって、あなたが挑戦する国際コンクールのリハーサルになるんじゃない」

「そうよ、屋外ステージ。劇場と違って、いいリハーサルになるよ」

 美織も微笑んで言う。

「じゃあ、瑞希と優一は『ドンキ』で決まりね」

 すみれが微笑む。

「え、本当に踊らせてもらえるんですか?」

 瑞希が目を輝かせる。

「踊ってもらうわ。でも、さっき言ってた『くるみ』の作品と『ドンキ』のグランやってもニ十分かかるかどうかってとこじゃない」

 すみれが瑞希と優一を見る。二人が頷く。

 北村と秋山が目を合わせて喜ぶ。そして、北村がもう一度、恐る恐る小さい声で、すみれと美織に話し掛け、二人に同じお願いをしてみる。

「すみれさんと美織さんも踊って頂けませんか?」

 すみれと美織の二人が目を合わせて微笑む。


「ところで、あやめ先生は踊らないんですか?」

 美織が北村に聞く。

「あやめ先生は、このイベントには出演されないんです。真理子先生と一緒に観に来てくれるんですけど」

「そう。あの子は、あの『スペインの踊り』の」

 すみれが聞くと、北村と秋山が少し困ったように目を合わせ、

「それが奈々ちゃん、その二日間は用事があるようで、参加しないんです」

「ふうん」

 すみれは別に気にしないという風に受け流す。


 北村がすみれに、

「すみれさん、お願いできますか?」

「え、演出ですか?」

「あ、はい、踊りも……」

 すみれは微笑んで、

「考えとく」

 と言い、付け足すように、

「そうだ、演出というか、私と美織に任せてくれるんだったら、真美ちゃんにも踊ってもらおうかな」

「え! 私も踊らせてくれるんですか」

 驚きながらも真美が目を輝かせる。園香と目を合わせ微笑む。

「踊ってもらうわよ」

 そう言って微笑むすみれ。

「でも、あれですか、バレエコンサートのようにヴァリエーションをつなげる感じでいくんですか?」

 真美の言葉に、すみれが微笑みながら、

「バレエを見たことのない人に初めてバレエを見てもらうんだったら、マイムでつなげる物語仕立てより、ヴァリエーションをつなげる方がいいと思うよ」

「私、何を踊るんですか?」

「え、久し振りに、最高の『エスメ』を見せてもらおうかしら……あ、北村先生と秋山先生も踊ってもらっていいですか」

「ええ!」

 二人が顔を見合わせて声を上げた。


「私と美織も踊りますから」

 すみれが驚く二人に微笑みながら言った。


――――――

〇リノリウム

ステージやバレエスタジオ、ダンススタジオなどの床材として使われる。


〇ヴァリエーション

ソロ(一人)で踊る踊り。

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