第209話 昼休みのひととき

 すみれがゆいたちのところで『キャンディの踊り』を見る。唯や真由は、すみれに見てもらえることが嬉しいようで元気いっぱいに踊る。すみれも微笑みながらキッズクラスの生徒たちの踊りを見る。

 踊り終わって、すみれがキッズクラスの生徒たちに話し掛ける。

「よくできました。みんな頑張ってるね。すごく、よくなってる。これからも頑張って練習しようね」

「はーい」「はーい」「はーい」

 みんなが手をあげて返事をする。すみれもキッズクラスの子どもたちに微笑む。


◇◇◇◇◇◇


 その日の午前中のリハーサルが終わった。


 昼休みに入った。一時間ほど休憩を取った後、午後から『雪』『花のワルツ』『終曲のワルツ』をするという。

 昼の休憩を稽古場の見学席で昼食を取る者。外で昼食を取る者。

 青山青葉あおやまあおばバレエ団のダンサーたちは、真理子、あやめと一緒に喫茶店エトワールで昼食を取る。

 美織みおり瑞希みずき、優一、すみれは稽古場の見学席で食事を取っていた。園香そのかと真美も美織たちと一緒に食事を取る。奈々は外で食べてくると言って出かけて行った。

 美織とすみれの前に唯と真由が座って食べている。


 園香たちが食事をしていると北村と秋山が相談があるということでやって来た。話を聞くと来月の下旬にある『文化イベント』についてだった。十月の下旬に市内と県内西部の地域イベントでバレエを踊るというのだ。

 市内のイベントでは特別に開設された野外のステージでいろいろな出し物をする企画があり、そのステージで三十分から四十分程度、花村バレエがバレエを踊るという。そして、県内西部の地域イベントの方はその地域の文化ホールで、そちらも様々な出し物の一部として三十分から四十分程度バレエを踊ることになっているそうだ。


 そこで今回、公演のために青山青葉バレエ団のとおるや美織、優一から振り付けてもらった『くるみ割り人形』の作品の中から何曲か踊らせてもらいたいという相談だった。


 すみれと美織が「丁度、青葉あおばとおるが来ているから聞いてみたら」と言う。作品は青葉や徹、優一が振り付け、演出してくれたもので、オーソドックスな『くるみ割り人形』の振付を踏襲しているが、細かい部分ではアレンジもあり、いわば青山青葉あおやまあおばバレエ団の振付、演出ということになる。

 すみれに聞くと、おそらく何の問題もなく、青葉あおばとおるも承諾してくれるだろうと言う。美織が「三十分から四十分とは、そこそこ長い時間が割り当てられているんですね」と言うと、北村と秋山が『中国の踊り』『トレパック』『あし笛』『キャンディ』『金平糖の精』を考えているが、時間を持て余しそうだと困った顔をする。


 そんな話をしていると青葉や徹たちが帰って来た。

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