第203話 大阪から高知へ

 翌日、園香そのかは真美の家族にお礼を言って新大阪駅に向かう。駅まで真美が車で送ってくれることになった。今回は短い旅行だったが、本当に印象深く短いなかでいろいろな出会いもあった。

 昨日も、また公演会場で恵人けいとに会えた。恵人は「また、もうすぐに高知に行くよ」と言ってくれた。恵人に会えたことも嬉しかった。


 真美にお礼を言う園香。

「いろいろ、ありがとう。本当にいい旅行になったよ。誘ってくれて、ありがとう」

「そうなん。よかった。大阪、気に入ってくれた? って聞いても、リハーサルと公演、バレエの稽古場しか行ってないもんなあ」

「でも、それはそれで、本当に面白かったよ。個性のある先生やダンサーにもたくさん会えたし」

「そうやろうな。でも、関西の人が皆あんなんちゃうから。今度、また、ゆっくり来てや。大阪も京都も神戸も案内するわ。バレエ教室巡りやないで」

「楽しみ。ところで、駅は昨日のホールの近くなの?」

 園香の言葉に、真美は少し考える様にして、

「ん? 近く? 近くはないなあ。昨日のホールに行ったときの駅は淀屋橋で大阪駅の近くやな。大阪駅と新大阪駅はちょっと離れてるなあ、近くはないんちゃうかなあ……」

「ふうん」

「新幹線で帰る言うてたやろ」

「うん、岡山まで、そこから南風なんぷうだね」

「帰りも、また、ちょっとした旅行やな」

「そうだね」


 駅に着くと新幹線の乗り場まで送ってくれた。

「じゃあ、またな、私は八月の終わりくらいに高知に帰るよ」

「本当に今回はありがとう。気を付けて帰ってきてね」

 そんな会話をして、駅で真美に見送ってもらい新幹線で岡山に向かった。


 大阪から間もなく次の大きな駅、新神戸駅、そして、西明石駅、姫路駅、相生駅と続き、昼過ぎに岡山駅に着いた。

 駅の中で軽く昼食を取った。


 岡山駅で高知に向かう『南風なんぷう』に乗る。瀬戸大橋を渡り四国に入る。

 本当にあっという間の旅行だったが、いろいろなことがあった。いろいろな出会いがあった。ついこの前、この橋を渡ったことを思い出し、改めて密度の濃い旅行だったと思う園香だった。


 高知に着いたときには夕方になっていた。今日の朝まで大阪にいたことが何か夢のように思えた。

 東京に行ったときもそうだったが、今回の大阪も、いろいろな出来事が、あまりにも非日常的で、こうして帰って来てみると、この数日間のことが現実のように思えなかった。

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