第199話 レベル真美
真美が舞台上のダンサーたちを見つめている。真美の目に彼女たちは、どのように映っているのだろう。
園香はふと思った、前に真美と花村バレエの佐和が話していた。真美は二位だった。一位は
そんなことを考えながら、園香が真美を見つめていると、真美と目が合った。
真美が呟く。
「みんな上手やな」
「でも、真美ちゃんコンクールで二位ってことは、今、舞台で踊っている誰よりも上手だったんでしょう」
真美が少し考えるようにして微笑む、
「そんな風に思ってくれて、ありがとうな。でも、そういうことでもないかもな」
「え?」
「そうやん。その前の年に一位取った先輩もいるし、その次の年に一位取った子もいる。それに、コンクールって、ある意味、その踊りばっかり、突き詰めて踊るみたいなとこもあるやん。もちろん、それだけじゃなくて、バレエのすべての技術や表現力で一定のレベル以上にならんと先生が出場させてくれんってこともあるけど……
「え?」
「まあ、
そういう真美の言葉を聞いていた瑞希が話に入ってくる。
「なに言ってんの。私は真美ちゃんはいろいろ踊れるの知ってるよ。あなたがコンクールで踊った踊りで、私の記憶にあるのは『ダイアナとアクティオン』のダイアナとか『ドン・キホーテ』のキトリ、あと『コッペリア』のスワニルダ。そうそう『グラン・パ・クラシック』はイマイチだったけど」
そう言って瑞希が微笑む。
「ええ! あれも見られたんですか」
「うん、でも、予選は通過したわよね」
「よく見てますね」
「真美ちゃんは決選で競う人の一人と思ってたから注目してたのよ。だから、真美ちゃんが花村バレエに初めて現れた時は本当に驚いたよ」
「ええ、嬉しいです」
「でも、グランパの時は勝ったなって思ったよ。今回は真美ちゃん気にしないでいいなって」
瑞希と真美が笑う。すみれが横から、
「真美ちゃん、なんで急にグランパだったの?」
と聞いてくる。グラン・パ・クラシックといえば、すみれが得意とするレパートリーだ。
「踊りたかったんです」
「そうなの。じゃあ、今度きちんと教えてあげるわよ」
「え! 本当ですか」
「ええ、
「それはいいです」
皆に笑いが広がった。舞台では最後のリハーサルが進んでいる。
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