第195話 『ライモンダ』リハーサルへ

 話をしていると真美が二人の男性ダンサーと一緒にやって来て紹介してくれた。

「こちら、今回の『ライモンダ』で主役のジャンと闘うアブデラフマン役をする宮崎美香バレエスタジオの相川奏汰あいかわかなたさん。そして、こちらが主役ジャン・ド・ブリエンヌ役をする神戸の須永葵すながあおいバレエスタジオの有賀新ありがしんさん」

「はじめまして」

 園香が挨拶すると、二人は真美から園香のことを聞いていたようで、気さくに話しをしてくれた。

 真美は二人を、すみれや美織みおり瑞希みずき古都こと、あやめにも改めて紹介してくれた。真美のおかげで皆の距離が一気に縮まり、打ち解けて話すことができた。


 優一や恵人けいとたち男性ダンサーはゲストとして、いろいろなところに行く機会があり、面識のあるダンサーも多い。そして、美織やすみれ、瑞希たちもバレエのイベントなどで交流があり、どのダンサーも顔を合わせたことぐらいはあったようだ。


 皆、花村バレエの公演を観に来てくれるという。そして、誰もが先程の唯のことが印象に残っていたようで、小さなゆいに微笑みかけて何か話していた。唯も嬉しそうに話しているのが可愛らしかった。佐和と井川、牧野も懐かしそうに話をしていた。



 しばらくして、リハーサルが再開された。

 休憩の和やかな雰囲気から一転して緊張した空気に包まれたが、どこか、愛情ある指導というのが伝わってきた。

 関西弁が飛び交う、この雰囲気は、園香そのかゆいにとって、最初は怖い印象があったが、真美にとっては当たり前という感じだった。

 美香の厳しい口調と、相変わらず扇子せんすで指示したり、拍子を取りながらというのは変わらないが、それもここでは普通の光景なのだと園香ばかりでなく、小さな唯も慣れてきたようだった。


 そして、何より微笑ましかったのは、鏡の前で、唯と真由たち姉妹が瑠々るると一緒に座って楽しそうに何か話しながら見ていたことだった。


 目の前ではレベルの高いダンサーたちのリハーサルが繰り広げられた。

 東京で出会った藤沢華ふじさわはなというダンサーもテクニックがあり、表現力も素晴らしいダンサーだった。先程、宮崎美香や宝生鈴ほうしょうりんに注意されていたダンサーも、ここに選抜されてきているダンサーというだけあって、驚くほどレベルが高い。

 そんな中にあって、特に最後の橘麗たちばなうらら有賀新ありがしんのグラン・パ・ド・ドゥは圧巻だった。真美が言っていた通り、主役ライモンダを踊る橘麗たちばなうららは見た目の大人しさから想像できないほどテクニックのあるバレリーナだった。表現力もることながら、高度な技術で魅せる踊りには圧倒された。


 明日はいよいよ公演が行われるホールでリハーサルだ。

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