第194話 『ライモンダ』リハーサル前のひととき

 ゆい瑠々るるの先程までのやり取りを皆が見ていた。

 気が付くと、真理子やあやめ、青葉あおばだけでなく、古都こと恵人けいとも周りで見ていた。見学者の中に花村バレエの佐和たち姉妹もいた。

佐和も驚いた表情で、

「唯ちゃんすごいね」

 と言うと妹の真由も、いよいよ唯を見る目が変わったという風に、

「唯ちゃん、すごい、真由にも教えてね」

 と言う。唯が下を向いて微笑みながら少し困った顔をする。

 古都ことと恵人がすみれと美織みおり瑞希みずきと話していた。恵人が園香そのかのところにやって来た。

「久し振りだね」

「うん」

 園香が少し嬉しそうな表情で微笑むと、真美がニコッとして、

「お邪魔な感じやな」

 と言って、大阪の友達のところに行ってしまった。


 恵人が微笑みながら、園香に話し掛ける。

「すごいね。ここに集まってるダンサーたち。すごいレベルの高さだよ」

「本当だよね」

「唯ちゃんもすごかったね。驚いたよ」

「本当、私も驚いたわよ」

「そうそう、ここに集まってるダンサーたち。僕も何人か知ってる人がいて話してたんだけど、なんか、今度の花村バレエの『くるみ割り人形』の公演、結構、たくさん観に来るみたいだよ」

「ええ、本当ですか」


 恵人と話していると、見覚えのある男性が数人やって来た。

「こんにちは」

「あ! 宝生ほうしょう先生に井川いかわ先生、それに牧野まきの先生。前回の公演ではお世話になりました」

 宝生ほうしょう先生というのは宝生鈴ほうしょうりんの息子で宝生聖ほうしょうひじりといい、ロシアへの留学経験もあり、全国的にも有名な男性バレエダンサーだ。そして、この三人は前回の花村バレエの公演『眠れる森の美女』のときゲストで来てくれたダンサー達だった。


「今度の公演では主役やるんやってなあ?」

 宝生聖ほうしょうひじりが園香に微笑みかける。

「はい」

「僕たちのスケジュール見て、どこかで、絶対、観に行こうって話してるんだ」

井川崇いかわたかし牧野淳一まきのじゅんいちと顔を見合わせながら言う。

「そうそう、楽しみにしてるから」

 花村バレエの前回公演『眠れる森の美女』で井川崇いかわたかしは松井佐和と『青い鳥とフロリナ姫のパ・ド・ドゥ』を、牧野淳一まきのじゅんいちはデジレ王子をしてくれた。

 園香が話していると、あやめと佐和もやって来て、久し振りの再会で話に花が咲いた。

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