第192話 小さな天才バレリーナ 唯と瑠々
「お嬢ちゃん、
もう一度、唯の頭をやさしく撫でて、やって来た春香というダンサーにアドバイスし始めた。
◇
「耳はいいらしいな。
持っていた小さなタンバリンをポンと鳴らして、
「ナポリも踊れんねんから。唯ちゃんいうたか、唯ちゃんは何か踊れんの?」
唯が少し困ったように下を向きながら、
「キャンディ」
と言うと、
「ふうん『くるみ割り人形』のキャンディか。私は『ドンキ』のキューピッドが踊れる。それに『白鳥』のナポリも」
そう言って、もう一度タンバリンをポンと鳴らして、唯にタンバリンを手渡した。
唯が下を向いて
すみれや
「すごいじゃない」
と
◇
次の瞬間……
ターン……
と突き抜けるようなタンバリンの音が稽古場に鳴り響いた。
そして、
稽古場にいた休憩中のダンサー全員の目線が唯に集まった。唯の放つオーラが稽古場の全員の心を吸い込む。
その後、数小節、エスメラルダのヴァリエーションを踊って見せた。
「誰や?」
近くで春香という生徒に踊りのアドバイスをしていた
そこに居合わせた全員が目を見開く様にして唯を見た。
小さいが、タンバリンを持った手、両足を突きさすように美しい角度で開くエシャペ。体全体を美しくツイストさせる。表現、目線。
ここに集まっているダンサーは様々なバレエ教室から選抜されたレベルの高いダンサーだ。その全員の視線が唯に集まり、稽古場の空気が静まり返った。
「誰や、その『エスメラルダ』は?」
ポーズを取ったままの唯を見つめる
いつの間にか真理子と
「このエスメラルダは……たぶん、唯ちゃん自身も見たことないと思うけど、このエスメラルダは……すみれさんよ」
すみれが唯の美しい姿に心を奪われるように見入っていた。
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