第187話 試験が終わって花火大会

 園香そのかたちの試験が終わった次の日、市内では花火大会があった。そして、その翌日から街を挙げての大きな夏祭りが始まる。

 真美が花火と祭りを見たいと言うので、園香は一緒に行く約束をしていた。夕方、喫茶店エトワールで待ち合わせた。

 喫茶店エトワールは、その日も賑わっていた。夕方、市内の中心にある公園では祭りの前夜祭が行われていた。街中が祭り一色になる。


「賑やかでええなあ」

 真美が楽しそうに言う。

「真美ちゃんは、お祭り好きなの?」

 園香が聞くと、真美は微笑みながら、

「そうやなあ、賑やかなのは好きやなあ。こういう、お祭りで踊るの参加したことないけどな」

「今度、参加してみたら」

「そやな。参加してみたいなあ。楽しそう」

 途中、大学の友達にもたくさん会った。バレエ教室に来ている生徒たちとも顔を合わせた。


 花火の観覧席が設営されている河原に行くと、河原を埋め尽くすほど、たくさんの人が花火大会が始まるのを待っている。周りにある飲食店や宿泊施設なども花火の観覧客で溢れている。

「すごい、人やな」

「本当だね」



「あれ、あれ奈々ちゃんと違う」

 真美が奈々を見つけた。奈々は大学の友達数人と一緒にいる。その中に奈々が付き合っている林田陽介はやしだようすけもいた。


「あ、園香に、真美ちゃん」

 奈々の方も気が付いてやってきた。陽介も一緒に来る。

「こんにちは」

 陽介が微笑む。以前、奈々に紹介されて二人とも陽介とは面識があった。園香と真美も挨拶を返す。


「奈々ちゃんから、みんな、公演の練習、頑張ってるって聞きいてます。絶対、見に行きますね」

「ありがとうございます」

「まあ、頑張ってるんは、奈々ちゃんも一緒やけどな」


 話をしていると花火大会が始まった。


 華やかな花火を皆で見ながら園香は思った。バレエの稽古の忙しさに加え、大学の試験も終わり、何か一段落したような思いがした。このひと時が、何か一つの締めくくりの様にも思えた。

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