第183話 いろいろな事情
週末はバレエ漬けだが
あと大変なのはクララ役の
レッスン前、その話になった。そのことは一応、前以って
美織と瑞希がそのことを、すみれに伝えると「よく受けたね、その役」と、さすがのすみれも、どう受け止めていいか分からなかった。
「でも、どうして、わざわざそんな大変な子に主役をさせるの? 来年の舞台じゃダメなの? 中学生になってから主役じゃダメだったのかな」
すみれが呟く。
「よくわからないですけど、ここだけの話、由奈ちゃんは、今の唯ちゃんみたいに、すごく小さい頃から頑張ってたんです。で、お母さんもお父さんもバレエに理解があって……だから、あやめさんが『いつか大きい舞台で絶対主役させる』って言ってたんです。で、今回の公演って、花村真理子バレエ研究所の三十周年記念公演なんですよ。だから、
「へえ、それを聞くと、園香ちゃんも真理子先生にとって、特別な、大切な、生徒さんなんだね」
「いえ、でも、ここまで東京の名門バレエ団が全面協力してくれるって、すごいです。信じられません」
「そうか、園香ちゃんは、まだまだ、真理子先生を知らないのね」
「え?」
「まあ、そのうち、その話もするよ。ねえ、ところで、園香ちゃんは中学受験したの?」
すみれが園香に聞く。
「はい、一応。奈々もです」
「へえ、すごいなあ。バレエしながら、どうなの? こっちの受験事情は」
「まあ、私たちの頃とは少し変わってると思いますけど、由奈ちゃんも信也君も賢いみたいだから、多分、大丈夫なんじゃないでしょうか」
「あなたたちの時と違うって言っても、あなた大学一年生なんでしょう、だったら、そんなに変わらないんじゃない。園香ちゃんもバレエしながら受験したんだ。六年生の時も公演に出たの?」
すみれが聞く。
「はい」
「ふうん。その時は、どんな作品で何の役をしたの?」
すみれが興味深そうに聞く。
「あのときは『コッペリア』でスワニルダの友人」
「え、コッペリウスの屋敷に入って行くメンバー?」
「はい」
「へえ、重要な役じゃない。公演はやっぱり十二月だったの?」
「そうでした。受験は二月だから」
「え、大変じゃない。終わってから一ヵ月しかない」
「まあ、
「そうなんだ。じゃあ、今回は園香ちゃんに二人の家庭教師お願いね」
「あ、ヴォルフガングだ」
瑞希が嬉しそうに言う。
「なんです?」
「え、白鳥の湖に出てくるじゃない。ジークフリートの家庭教師」
「まあ、美織も賢いから多分教えてくれるよ」
すみれが美織に振る。
「美織さん字はヘタだけどね」
瑞希の言葉に、すみれが笑いながら、
「唯ちゃんの方が上手だったりして」
「ひどーい」
美織の言葉に皆が笑う。
すみれが園香に、
「まあ、出ると決めたんだったら、ここで勉強してもいいから、いろいろ協力してあげましょう」
瑞希が園香に耳打ちするように、
「いざとなったら、すみれさんも協力してくれるよ」
「え」
「すっごく、頭いいんだよ。いつも本読んでるでしょう。稽古場で」
「あ……」
「それとバレエフェスティバル思い出して、
「え」
「まあ、中学受験は外国語は関係ないかもしれないけど、普通にスペックが高いってことよ」
美織が隣から、
「優一もパズルとかクイズ得意だよ」
「なにそのスペック」
瑞希が呆れたように言う。
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