第181話 そして、すみれのレッスン オープンクラス(一)

「それではよろしくお願いします」

 最初は全員フロアに寝た状態からストレッチと体の使い方を確認していく。園香そのかは何度か、すみれが指導しているところを見て思った。こういうストレッチをさせる場合、すみれはそこにいるダンサーの状態やレベル、あるいは可能性のようなものを見極めている気がした。

 美織みおりが音出しをしながらレッスンのサポートに入る。瑞希みずきも生徒たちと同じように練習をしながらレッスンをサポートする。園香や真美は生徒として参加した。

 ストレッチと筋トレを一通りする。男子たちはかなりきついという感じでやっていたが、すみれが花村バレエの男子たちのところに行き、

げんさんに『ストレッチやっとけ』って言われてたでしょ」

 と言って微笑む。


 ストレッチをする中で、その後のバーレッスンやセンターレッスンでの体の使い方や使う筋肉を教えていく。体のどの部分を意識するのか、どのように体を使うのか、なぜ、このストレッチをしているのか、どんな時に役に立つのか、やってなかったら、どんなとき困るのか、今まで意識せずに、ただ体の柔軟性を高めるため、少しでも柔らかければ……とやっていたストレッチ。

 今より柔らかければ……というのもあるだろうが、この技術には、この程度の柔軟性が必要とか、これぐらいの筋力がないと綺麗に見せることができない、あるいは、そのテクニックそのものができないなど、具体的にストレッチ、筋トレの必要性を教えていく。

 バーレッスンやセンターレッスンで身に付く筋力もある。しかし、ストレッチで可動域を広げ、筋トレで筋力を補強していかなければ、今の体の条件でしか踊れない。

もちろん筋肉を付けることそのものが目的ではなく、美しく踊るため、ポーズをキープするために必要な筋力を付けることが目的だ。むやみに筋トレばかりをするのもよくない。


 センターバーを準備し、足のポジション、腕のポジションを確認する。足は二番ポジションで立たせる。バレエの足のポジションはいずれのポジションも足先を外に向けるように立つ。その際、足先だけで開くのではなく、足の付け根から旋回せんかいするように開くターンアウト。バレエでアンディオールと呼ばれる外側に回転させて開く使い方だ。

 二番ポジションは左右の足のかかと肩幅かたはば程度になるよう横に開いて立つ。

 これでプリエ(ひざを曲げる)した時、ひざが前に出ず足先の方向に曲がること、頭から腰までの軸、重心がしっかり両足に乗っていることを確認する。

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