第180話 オープンクラスの前の出来事
見学席には市内のバレエ教室の先生たちも全員揃っていた。キッズクラスの生徒やお母さんもたくさんいる。
稽古場のフロアには、花村バレエの生徒ばかりでなく、他の教室の生徒たちもたくさんいる。気が付くと百人ぐらいになっている。各自、気の合う者同士でストレッチをしている。
秋山と山野バレエの
スタッフと見学に来ていた小学生や中学生のお母さん、キッズクラスのお母さんたちも手伝い、あっという間に全員のレオタードに名前の布を縫い付けた。
◇
すみれが前以って、何かを確認するように美織と優一、瑞希と話をしていた。組み立てたセンターバーを、一旦、稽古場の端に置く。ストレッチから始めるようだ。
すみれは黒のレオタードに黒の短い巻きスカートを巻いている。教室を一通り周り生徒たちに笑顔で挨拶し、何か一言二言声を掛けていく。ほとんどの生徒が、すみれたち四人を知っている。バレエフェスティバルを観に行った生徒も多い。
すみれは大人クラスの千春たちとも楽しそうに話している。大人クラスの男性も来ていた。その男性にも声を掛けてストレッチのアドバイスをしていた。何かバーにつかまって足を軽く振ったり、腕を軽く回したりして見せていた。
集まっている男子生徒のところでも同じようなことをしていた。気が付くと痛そうな表情で、固まったように
クララ役の
そこへ、すみれがやって来た。先程の瑞希のレッスンを見た由奈や佐和、玲子は緊張している。
「こんにちは、花村バレエの生徒さん?」
すみれの問いかけに、園香が紹介する。
「こちらがクララ役の由奈ちゃんです。この二人が『あし笛』を踊る佐和ちゃんと玲子ちゃんです。佐和ちゃんはキャンディを踊る真由ちゃんのお姉さんです。玲子ちゃんはコロンビーヌも踊ります」
「そうなの。頑張ろうね。よろしくね。真由ちゃんキャンディ頑張ってるね」
すみれが佐和のストレッチをしている様子を見て、足の
「ここ、足の付け根から……そのために、ここ、骨盤の少し上の部分を引き上げる様に」
佐和が頷く。玲子にも同じように引き上げるところを教える。
「少し足が自由になる感じわかる? そうやってストレッチすると、もっと、足が開く様になるから」
二人が頷く。
「こういう、ストレッチをしているときでも肩は下げて」
佐和と玲子が顔を見合わせて微笑む。その後、由奈にも同じように体の使い方を教える。
他のバレエ教室の生徒たちにも優しくアドバイスしていく。
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