第176話 すみれのレッスンを前に

 白地に青い模様が美しいスカーフを頭に巻いてサングラスをかけて白の長袖Tシャツにジーンズ。黒のバッグを肩に掛けて、瑞希みずきが教室に入って来る。その後ろをつばの広い薄いピンクのガルボハットに薄いピンクのワンピースの美織みおり。そして一緒に、白地に青い模様が美しいスカーフを頭に巻いてサングラスをかけ、白の長袖Tシャツに黒のジーンズ。黒のバッグを肩に掛けて、すみれがやってくる。後ろから、爽やかなTシャツとジーンズ姿の優一が美織と自分のバッグを持ってやって来る。

「おはようございます」

 四人が稽古場に入って来た。


「おはようございます」

 キッズクラスとスタッフの全員が一斉に挨拶する。


 四人はずっと何か話をしている。

……

「ねえ、美織と優一は行くけど、瑞希も行く?」

「付いて行ってもいいんですか?」

「いいよ、ここもお休みみたいだし、あなた一人残っても仕方ないでしょう」

すみれが瑞希を何かに誘うような話をしている。


 ゆいと真由が美織たちのところに走って来て、片足をちょこんと前に出して両手を広げバレエのルベランス(挨拶)をする。

「おはようございます」

「唯ちゃん、真由ちゃん、おはよう。今日も元気だね」

 すみれと美織が二人の頭を撫でる。喜んで皆の方に走って行く二人。


 見学席にいた詩保しほ葉子ようこがすみれのところにやって来た。

「おはようございます。今日は見学させて頂きます」

「おはようございます。久宝くぼうと申します」

 すみれが誰だろうという表情で、美織に視線を向けながら丁寧に挨拶を返す。

「おはようございます。市内のバレエ教室の山野先生と橋野先生ですよね」

 美織が覚えていたのに詩保と葉子が顔を見合わせて微笑む。美織や優一、瑞希たちは以前バレエフェスティバルの前にここで挨拶をした。

 すみれが改めて丁寧に挨拶する。二人とも久宝くぼうすみれと自分たちが挨拶している状況が信じられないという表情だった。

 少し話した後、二人はレッスンの準備をして稽古場に戻って来てストレッチを始める。


 すみれや美織たちは、何か話しながらストレッチをしている。この時も見学席にいた者は皆、彼女たちの柔らかさに目を奪われたが、彼女たちは何も気にしないようにストレッチを続ける。キッズクラスの子たちが四人の周りで真似するようにストレッチをするが、キッズクラスの子でも四人の柔軟性についていけない子がほとんどだ。

……

青葉あおば先生も来るんですよね」

「そうだよ。ここの真理子先生とあやめさんも行くと思うよ。バレエ協会の関係の公演みたいだから」

「バレエ協会のって、全国の先生が来るんですか?」

「まさか、たまたま、つながりがあるんでしょう。青葉あおば先生と真理子先生。ねえ、瑞希、恵人けいとも来るって言ってなかった?」

「え、そうなんですか? 聞いてないです。他に誰が来るんですか?」

「バレエフェスティバルに参加者ということで美織と優一と私は呼ばれてるんだよ。あと古都ことも」

「へえ、踊るんですか?」

「踊らないよ、招待客かな」

「瑞希、あなた来るなら、私たちが交通費と宿泊費出してあげるよ。バレエフェスティバルの時はお世話になったし、あと、チケットのこと先生に言っとくよ」

「ええ! 本当ですか?」


 見学席の全員が何の話だろうと四人に注目している。

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