第173話 その翌日の話 真美と

 日曜日は午前十時からキッズクラスのレッスンがある。午前九時、北村、秋山が稽古場に来る。そして、園香そのかと真美が手伝いに来た。秋山も昨日すみれがレッスンに来たことを聞いて驚いた。


 園香と真美が稽古場で準備をする。稽古場のセンターにレッスンバーを構える。キッズクラスのために一番低い高さに合わせる。


 園香たちは八月になると一学期の試験がある。この稽古場も八月になると少し休みが続く。


「なあ、園ちゃん試験の準備してる?」

「まあ、ぼちぼち」

「しんどいなあ」

 嫌そうな顔をする真美に園香が微笑む。


「ところで、真美ちゃんは試験終わったら大阪に帰るの?」

「そうやなあ」

「ふうん、真美ちゃんって、結構、大阪に帰ってるの?」

「ゴールデンウィーク以来やな。今度、帰るとき、この前東京で会った子らの舞台見に行こう思てんねん」

「ああ『ライモンダ』とか言ってた、あれ」

「そうそう」

「いいな。私も見たいな」

「一緒に行く?」

「え、でも急には」

「私んちに泊まらせてあげるで」

「え?」

「泊まるとこいっぱいあるから」

「え、真美ちゃんちもバレエ教室なの?」

「なんでや、バレエ教室って宿泊施設かい!」


 東京に行ったとき、瑞希みずきが泊まるところがたくさんあると言って、行ってみたらバレエ教室だったというのが強く印象に残っていた。

 そして、何よりも、その時、瑞希が家に泊めてくれたお陰で、東京に長く滞在したが、予定よりかなり宿泊費が節約できた。


「ところで何で帰るの?」

「車やん」

「え、真美ちゃんが運転するの? 大阪まで……」

「そうやん」

「危ないんじゃない」

「失礼やな」


 そんな話をする中で、大学の試験が終わったら大阪の真美の家に遊びに行くことになった。そして、バレエフェスティバルで会った関西の二人が出演する公演『ラインモンダ』を見に行くことになった。

 チケットは真美が友人に言って準備してくれるという。


 園香は、小さい頃から今まで長くバレエをしていたが、これほど急展開で自分にとってのバレエの世界が広がっていくことは予想もしていなかった。

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