第165話 土曜日の教室 キッズクラスで(一)
土曜日の昼過ぎ。小学生や中学、高校生は夏休みに入ったところだ。
花村バレエは主催者である真理子とあやめがまだ東京から帰ってきてなかった。今度の公演のことでいろいろ打ち合わせなどがあるということだった。
そんなこともあってレッスンは七月の終わりからお盆が開けて一段落するまで、オープンクラスのような形でレッスンをすることになっている。公演の振りは、それぞれの生徒をバレエ教師の北村や秋山が個別に見ている。
午後の最初のレッスンはキッズクラスがある。そのあと小学生、中学生から大人クラスまで参加できるオープンクラスだ。その日も園香はバレエ教師の北村からキッズクラスの手伝いを頼まれていた。真美が一緒に行きたいということでキッズクラスの時間から、真美と一緒に稽古場に行くことになった。
稽古場に付くと教室から生徒たちの元気な声が聞こえてくる。小学生の低学年以下の生徒たちが十人くらい楽しそうに遊んでいる。園香と真美を見つけて、
「おはようございます」「おはよーございます」
「お は よ う ご ざ い ま す」
と大きな声で挨拶する。
その中で
「お は よ う ご ざ い ま す」
右足をちょこんと前に出し、手を広げる様にしてお辞儀をする。
「あら、
真美も微笑んで挨拶する。
「おはようございます」
真由も走って来て挨拶する。
「真由ちゃん、おはようございます。みんな元気そうね」
真美が微笑む。
唯と真由が嬉しそうに微笑んで、何か話しながら走って行った。唯のお母さんが見学席で微笑んで会釈する。園香たちも微笑み会釈を返す。
北村が園香たちのところにやって来た。
「今日も体験レッスンの生徒が三人来るの」
「そうなんですか」
実はこの春、
「真美ちゃんも、今日は体験レッスンでいいですよ」
という北村の言葉に、
「え、そうなんですか? でも、そんなんなあ。でも決まりやったらしょうがないなあ。今日はバレエの体験ということで」
「なにそれ、全国コンクール二位の人がバレエ体験なの?」
園香が呆れたように言う。
「そういう決まりやったら、しょうがないわ。ただで受けれるんですか?」
微笑む真美に、北村も微笑みながら、
「今日のレッスンはただでどうぞ。
「ええ、美織さんって、国際コンクール一位やん。世界一位でバレエの体験レッスンかい。それに瑞希さんも全国コンクール一位受賞者で、今度、国際コンクール行くんやん」
「まあまあ、美織さんもその後レッスンしてもらったの。真美ちゃんも、初回レッスン代ただにするからキッズクラスのお手伝い、ただでお願いね」
「かなわんなあ」
唯と真由が微笑みながら、真美の手を引いて更衣室へ案内する。
園香も微笑みながら付いて行く。
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