第159話 バレエフェスティバルAプログラム 第二部

 第二部の演目が始まる。


バレエフェスティバルAプログラム第二部


8『マノン』

 久宝くぼうすみれ マニュエル・ラクロワ

 すみれの演技と踊りが観客を圧倒する。すみれはマノンの魅力、奥深さを余すところなく表現する。客席を埋め尽くした観客全員を釘付けにする演技力だった。ラクロワとの掛け合いも美しく。観る者を魅了する作品となった。この演目でも拍手と喝采が鳴りやまないほどだった。


9『ラ・フィユ・マル・ガルデ』

 マリア・テレホワ ウラジミール・ワレリエフ

 すみれのあと、まだ観客席が落ち着いていない。観客が興奮状態だ。この状態で次の演目。しかし、テレホワとワレリエフは、まったく動じない。この雰囲気の中で、一瞬にして『ラ・フィユ・マル・ガルデ』リーズとコーラの世界に観客を引き込んだ。

 テレホワとワレリエフの登場の瞬間、観客が皆、彼女らに大きな拍手を送った。観ている園香そのかや真美も、この二人の技量とインパクトに圧倒された。


10『白鳥の湖』

 九条古都くじょうこと デイビッド・ロレンス

 華やかな曲でオディールの古都こととジークフリートのロレンスが踊る。アダージオでは登場の瞬間から引き込まれる。

 ロレンスのジークフリートは気品あるノーブルの踊り。非の打ちどころのない王子の踊りだった。

 古都のオディールは妖艶な世界に観客が引き込まれる。客席全体を神秘的な雰囲気が包み込む。

 コーダ。古都の三十二回転のグランフェッテで観客が沸き立つ。


11『コッペリア』

 ハンナ・クラフト エルネスト・ルデンバーグ

 ルデンバーグのフランツは爽やかで見ている者を惹きつける。クラフトのスワニルダも魅力的だ。コーダではそれぞれの超絶なテクニックで客席が盛り上がった。拍手が渦巻く。


12『ライモンダ』

 京野美織きょうのみおり 久宝優一くぼうゆういち

 異国情緒あふれる華やかな曲で登場する二人。

 アダージオでは哀愁漂う美しい曲で踊る。ハンガリーの民族舞踊を取り入れた振りが特徴的な踊りだ。

 優一が踊るジャン・ド・ブリエンヌのヴァリエーションは民族舞踊の要素を含むが一つ一つのテクニックに気品あふれるノーブルの表現が美しい踊りだ。

 美織みおりのライモンダのヴァリエーション。静かな曲の中、曲の中盤までポワントで立った状態で踊る。静かな中にテクニックを要する振りが多い。美織の美しい体を持ってこそ表現が生きる振りも多い。

 コーダはより民族舞踊色が強い曲で二人がテクニックを披露する。この踊りも踊り終わると観客席が惜しみない拍手に包まれた。。


13『火の鳥』

 アニエス・ルエル ローラン・ディディエ

 幻想的なストラヴィンスキーの曲で劇場は一瞬にしてバレエ『火の鳥』の世界に包み込まれた。ルエルの繊細な火の鳥の表現が観ている観客の心を掴む。何か魔法にでもかかったような不思議な感覚に陥ってしまう。

 踊り終わると拍手が渦巻く。


14・グランド・フィナーレ

『くるみ割り人形』終曲のワルツ

 全出演者

 最後にバレエフェスティバルの出演者全員が登場しルベランス(お辞儀)をしながら踊る。華やかな曲で全員が踊る。


 園香の少し前の席でゆいがお母さんと一緒に観ている。唯は拍手をしながら、この曲知ってる、という様ににこにこしながら何かお母さんに話し掛けていた。


 拍手と喝采が渦巻く中舞台は幕を下ろす。


 幕前に出てそれぞれのダンサーたちがパートナーとともにお辞儀をする。もう一度幕が上がり全員でお辞儀をする。大きな拍手と喝采の中、幕が下りて第一日目のバレエフェスティバルが終わった。

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