第157話 バレエフェスティバル 休憩時間

 第一部が終わり休憩時間に入る。園香そのかは何か飲み物を飲もうとロビーに出る。ロビーにはたくさんの人がいる。皆それぞれに素晴らしい舞台の感想などを話している。恵人けいとが園香のところにやって来た。

「なにか飲みたいものある? 買って来てあげるよ」

「え、いいです、いいです」

 周りを見回しても、どこかのバレエ関係者のような人が多く集まっているこの場所で、青山青葉あおやまあおばバレエ団のプリンシパル河合恵人かわいけいとに飲み物を買ってこさせるなど、とんでもない話だ。

 一緒に飲み物を買いに行き飲んでいると真美がやって来た。


「すごかったね」

「すごすぎるわ……なんかさあ、やっぱりあれやな」

「テレホワ?」

「いやいや、テレホワ好きやで、違う違う、なんかな、私、思てんけど、いや、これは完全に私の個人的な意見として聞き流してや、みんなすごいし、テレホワもルエルもすみれさんも古都さんも、みんなすごいけど、やっぱり、美織みおりさんってすごいな」

「でしょ。私も思ったの」

「うん。あの人はなんか違うわ。あの、すみれさんが特別に目を掛ける一番のダンサーが美織さんっていうのがわかった気がしたわ」

 恵人も頷きながら呟く。

「そうなんだよね。なんというか、彼女はスターなんだよ。このバレエフェスティバルの幕開けで一番最初に踊って……なんていうか、一瞬で世界最高のバレエの祭典へ、ようこそ……みたいな、なんか別世界へ連れていかれた感じだもんね」

「本当にすごかったわね」園香も美織の踊りに圧倒された。

「綺麗だよな。美織さんの踊り」

「ほんまやな。なんか、あんなん見せられたら、私らがやってるのなんですか? それバレエですか? って感じやな」

「でも、すみれさんも本当にすごかったわ」園香が呟く。

「彼女はねえ、まあ、何というか、もう、言葉にできんレベルやな、マノンもそうやけど、グラン・パ・クラシック、なんなん、あのバランス感覚、普通やないな。あの踊りで、なんであんなに余裕があるん」

「なんか、出演者みんな、すごいテクニックと表現力なのに、なんか『見せてる』っていうより『楽しんでる』って感じだもんね」

「そうそう、みんな余裕あり過ぎなんだよ。普通のダンサーからしたら、考えられないほどレベルの高い踊りを見せてるのに……」


 話をしていると花村バレエの面々がやって来た。花村バレエの生徒も皆、あまりのすごさに言葉を失ったという感じだった。

 聞いてみるとゆいと唯のお母さん、由奈ゆな、佐和たち姉妹はBプログラムも観る。

 それ以外の面々、バレエ教師の北村、秋山、大人クラスの千春たち。男子たちも、このAプログラムを観て明日帰るそうだ。


 園香が飲み物を飲んでいると、向こうの方からこちらを見ている二人の女性がいる。見るからにバレリーナという感じの二人だ。

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