第156話 バレエフェスティバルAプログラム 第一部

 園香そのかは初めてバレエフェスティバルに足を運びなまでその舞台を観た。威厳ある世界最高峰のバレエの祭典。ここに来る前に瑞希みずきも言っていたが、この舞台に立つダンサーは世界の有名バレエ団のプリンシパル。国際コンクールで一位、金賞を受賞したダンサーばかりだ。いわば名実ともに世界一のダンサーが競演するバレエの祭典。ガラコンサート形式で有名なバレエの演目の最大の見せ場をそれぞれのダンサーが踊る。世界で最もレベルの高いバレエの舞台といえる。


バレエフェスティバルAプログラム第一部


1『海賊』

 京野美織きょうのみおり 久宝優一くぼうゆういち

 幕が上がり、美しいハープの音色。一曲目を飾るのは美織と優一の『海賊』だ。なんと美しく伸びやかな表現。アダージオはまるで潮風を感じるような爽やかな雰囲気を感じる。美織の美しさが際立つ。

 優一のヴァリエーションも美しく野性味溢れる表現。しなやかな海賊に心を奪われる。

 美織のヴァリエーションも地中海の爽やかな風、波の音を感じさせる。煌めく様な美しさがあった。

 そして、コーダ。二人の華麗なテクニック、鮮やかな表現が観る者の心を奪う。

満場の拍手に包まれる。


2『シルヴィア』

 アンナ・マリコーワ アンドレイ・サルコフ

 ロシアのバレリーナ、マリコーワとサルコフによる『シルヴィア』美しく余裕を感じさせる表現。マリコーワのシルヴィアのヴァリエーションは高度な技術を美しく見せる。


3『パリの炎』

 アニエス・ルエル ローラン・ディディエ

 ルエルとディディエによる『パリの炎』舞台で観る二人の踊りは稽古場の踊りとは、まったく違う輝きを放っていた。ルエルの正確で美しい踊り。

 ディディエの男性ヴァリエーションは力強さと迫力に圧倒される。舞台を大きく使った踊りもどこか安定感を感じる。

 時に男性のヴァリエーションで舞台を大きく使うあまり、数回ジャンプをして舞台を移動する際、最後の方で調整するダンサーもいるが、この舞台に出演するダンサーはそれがない。ピッタリ均等なジャンプを数回して舞台の端に少し余裕を持たせてポーズを取る。

 ルエルの女性ヴァリエーションは見事にすべてのリズムを音通りに足で表現する。その動きも鮮明でくっきりと正確な音取りができているのがわかる。


4『ジゼル』

 マリア・テレホワ ウラジミール・ワレリエフ

 テレホワとワレリエフの『ジゼル』はテレホワの卓越した表現力も然ることながら、ワレリエフのリフトの技術が素晴らしい。この世のものならぬジゼルが中空を浮遊するように移動する。幻想的で幽玄な世界が繰り広げられる。

 朝、劇場の入り口で真美と写真を撮っていた時の、気さくでにこやかな女性からは想像ができない。それは、まさにジゼルそのものだった。


5『グラン・パ・クラシック』

 久宝すみれ マニュエル・ラクロワ

 すみれとラクロワによる『グラン・パ・クラシック』は圧巻だった。

 バレエ作品の中でも最高難度を誇るグラン・パ・ド・ドゥ。正確なポジション、高度なテクニック、身体能力の高さが要求される。

 特に、すみれの女性ヴァリエーションの後、鳴り止まないほどの拍手に包まれた。


6『瀕死の白鳥』

 エレナ・コルポワ

 エレナ・コルポワによる『瀕死の白鳥』はコルポワによる圧倒的な表現力が観客を魅了した。鬼気迫る表現力は強烈な印象を心に刻み込まれた。


7『ロミオとジュリエット』

 九条古都くじょうこと デイビッド・ロレンス

 古都こととロレンスによる『ロミオとジュリエット』は爽やかな空気を感じさせるものがあった。初々しいロミオとジュリエットの表現は観ている者に心地よい感動を与えた。

 二人の踊りが終わると客席が大きな拍手に包まれた。


 古都とロレンスの『ロミオとジュリエット』で一部が終わり休憩に入る。

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