第152話 稽古場でのリハーサルを終えて
ルエルとディディエの踊りも
園香がこの二週間で
それぞれに素晴らしい個性を持っているが、ルエルの踊りは、それらとは異なる色彩を放っていた。ルエルとディディエの踊りはどの踊りも美しい。ポーズ、正確なポジションを取りながら、最大限に大きく伸びやかに自由に踊っている感じだ。どこか型にとらわれない自由な感じがする。
すべての練習が終わった後、
この踊りも真美はアダージオからコーダまで踊った経験があるようだった。細かい振り付けについては確認していたが、作品の主役キトリを踊る中で、単にスペインの踊りという表現ではなく、既に『キトリ』のイメージが出来上がっている感じだ。バレエ『ドン・キホーテ』の主役キトリが自分のものになっている。
踊り終わった後、ルエルが園香と真美にキトリのヴァリエーションを教えてくれた。
興味深そうに近くで聞いていた
ルエルは
ルエルは唯に微笑み、目の前で『火の鳥』の腕の表現を見せる。唯も真由も理央も目を丸くして驚いたが、すぐに真似してみる。由奈と佐和も一緒にやってみる。ルエルは微笑みながら一人一人の手を取り丁寧に教える。
花村バレエのバレエ教師北村や秋山、大人クラスの千春たちも目の前にいることさえ信じられないルエルから手取り足取り教えてもらえることは夢のような時間だった。
恵人もディディエからアドバイスをもらっていたようだ。花村バレエの男子たちはディディエに『パリの炎』と『ドン・キホーテ』の男性ヴァリエーションを教えてももらっていた。
子供たちのお母さんたちも最初は遠巻きに見ていたが、思っていた以上にフレンドリーな外国人ダンサーたちと、片言ではあるがいろいろな話ができた。皆それぞれに楽しいひと時を過ごした。
一通り皆と話をした後、すみれと美織、瑞希がルエルと何か話していた。近くで聞いていた園香は、すべて内容がわかったわけではないが、瑞希の国際コンクールの話をしていたようだが、すみれと美織が驚いたように「ええ!」と声を上げたのに、一瞬、皆が振り返った。その後少し三人で話した後、すみれと美織が真理子のところに行く。真理子とあやめも驚いた表情をしてルエルのところにやって来た。フランス語でルエルと会話をする真理子、あやめ、美織、すみれに驚く園香だったが会話の内容はまったくわからなかった。
わからなかったがルエルが花村バレエの生徒たちに目を向け微笑んだ表情から、何かまた、思いもよらないことが起こりそうな気がした。
いよいよ明日から劇場入りしてのリハーサルが始まる。
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