第151話 リハーサル そしてアニエス・ルエル

 アニエス・ルエルとローラン・ディディエは『パリの炎』『火の鳥』『ドン・キホーテ』を踊る。

 バレエ『パリの炎』はフランス革命を舞台にしたバレエで有名なパ・ド・ドゥは村娘ジャンヌと義勇兵フィリップの踊りだ。

 女性ジャンヌの衣装はトリコロールのリボンやタスキ、頭飾りもトリコロールのリボンという衣装が多く、男性フィリップの衣装は白のブラウスにウエストにトリコロールのベルという衣装が多い。

 このパ・ド・ドゥはアントレ、アダージオ、男性ヴァリエーション、女性ヴァリエーション、コーダという形をとらず。アントレ(導入)から男性ヴァリエーション、女性ヴァリエーション、そしてコーダという形をとる。


アントレ(導入)

 華やかに二人で登場するがリフトや女性の回転を男性がサポートする振りはほとんどなく、ジャンプする振りでは一緒にジャンプし、女性が回転系の技術を見せるとき男性は女性のそばに立って見守る感じである。ジャンヌ役のルエルの技術が美しい。正確なポジション、安定したターン。空中でもはっきり美しいバレエのポーズが見える跳躍。


男性ヴァリエーション

 バレエ『パリの炎』の男性ヴァリエーションは曲の始まりから迫力がある。舞台の奥から前まで舞台を斜めに移動する大きな跳躍から始まる。大きなテクニックでまとめられたヴァリエーションはコンクールなどでもよく踊られる華やかな踊りの一つだ。


女性ヴァリエーション

 細やかにすべての音を取って踊る。足先でリズムを取り、上半身と腕の動きでメロディーを表現する。すべての音を取るというのは、あらゆる踊りで共通であるが、この踊りほど細かく音、リズムを表現する踊りは少ないように思う。おそらく初めてバレエを見た人でも、そこに目がいくだろう。美しい表現よりも、超絶なテクニックよりも、すべての音を全部細かく足先で取りながら踊る。

 ルエルの踊りは一つ一つの動き、ポジションが鮮明に見える。細やかな動きの中で体の向きも曖昧なところがない。

 周りで見ている由奈や佐和も真剣んな眼差しで見ている。


コーダ

 ルエルとディディエがそれぞれテクニックを見せる。大技が連続する二人のコーダは圧巻だった。


火の鳥

 幻想的なストラヴィンスキーの曲で踊られるバレエ『火の鳥』数あるバレエ作品の中で鳥を表現する作品がいくつかある。

 バレエ『白鳥の湖』の白鳥、バレエ『眠れる森の美女』のフロリナ王女と青い鳥のパ・ド・ドゥで出てくる青い鳥……

 そして、火の鳥。火の鳥は赤い衣装で、その表現は比較的大きな跳躍と手首から先を波打たせるように使う表現が特徴的だ。

 大きな跳躍としなやかな表現で、この世のものとは思えない幻想的な鳥を表現し、腕を大きく使うが手首から手先の細やかな使い方で『火』を表現する。


 小さな唯が、いつにも増して興味深そうに見ている。そして、真似して手を動かしてみる。すみれと美織がクスッと微笑む。

「かわいい火の鳥ね」


 ルエルも気付いて微笑む。


ドン・キホーテ

 最後に『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ。ルエルとディディエが完璧なリハーサルを終え、稽古場での練習は終わった。


 バレエフェスティバル参加者の稽古場での最終リハーサルが終わった。

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