第150話 リハーサル 白鳥の湖(第三幕)よりグラン・パ・ド・ドゥ
◇◇◇◇◇◇
『白鳥の湖』の方は
すみれが園香と真美に言う。
「あなたたち二人、アダージオからコーダまで覚えておきなさい」
「え」
二人は目を丸くして顔を見合わせる。
「オディールですか?」
「ええ、これだけじゃないわよ。次のルエルの踊りも全部」
「は、はい」
園香と真美の表情が真剣さを増した。園香はいろいろな作品のヴァリエーション(踊り)を大体知っている。黒鳥のヴァリエーションも舞台で踊ったことはなかったが振りは知っている。それでも、すみれから改めて言われると緊張する。この踊りを自分が舞台で踊る踊りとして覚えようとしたことがなかった。
一通り
その間に
真美は黒鳥を踊ったことがある……
園香の目にはそう見えた。そんなことを考えていると恵人が、
「真美ちゃんはいろいろなヴァリエーションを踊るよね。彼女のスワニルダも見たことがあるよ」
「え、コッペリア?」
「うん、ヴァリエーションだけだよ」
「エスメラルダだけじゃないの?」
「ああ、器用というか、なんでも踊る……コンクールではよくエスメラルダ踊ってたけど、スワニルダと黒鳥も踊ってるの見たことあるよ」
「すごいのね」
「彼女のレパートリーを全部知ってるわけじゃないけど上手だったよ」
「恵人君も一位取ったことあるんでしょう」
「うん、まあ、そんなこともあって、ここでプリンシパルやらせてもらってる」
「じゃあ、真美ちゃんもここに来たらプリンシパル?」
頷きながら微笑み、
「そうだね。彼女は間違いなくそのレベルだ。考えてみてよ。コンクールなんて大きいコンクールだと三百人くらい出場するんだよ。その中で、いろんな人の記憶に残るダンサーなんだよ彼女」
「すごいのね」
「園香ちゃんもだよ」
「え?」
「ここに来たらプリンシパル」
「いえいえ、とんでもないです」
「でも、すみれさんに呼ばれてここに来てるんでしょ」
「え?」
「この三階の稽古場」
「あ、いえ、ここは瑞希さんに付いて来たというか……」
「でも、ここで金平糖のヴァリエーション見てもらったでしょ」
「ここで、すみれさんに指導してもらったのは……すみれさんに呼ばれて、ここで直接指導してもらったのは、
「え、そ、そうなんですか」
「あ、もう一人忘れてた」
「え?」
恵人が微笑みながら目を向ける。
「
唯がにこにこしながら何かすみれに話し掛けていた。
古都とロレンスのリハーサルが終わった。
全員の注目がルエルに集まる。
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